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急変。にしおりをはさみました!
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急変。
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「ッ何故……そう思う…?」
「…だってひとくん……刑事さんだから…」
「…!!」
―――あぁ……コイツが“橘先生の息子”である事に動揺しすぎて
すっかり忘れていたが…
コイツは橘先生の息子である以前に――
“殺人事件の被害者の息子”でもあったな…
「で…どうなの…?」
「…お前が聞きたいのはつまり…
俺が“6年前の通り魔事件の被害者”…
“橘 椿について何か知っているかどうか”…と言う事か…?」
「ッ!そう…っ!
やっぱりひとくん……母さんの事を知って…ッ、」
葵は縋るように仁の着ているコートを思わず掴むが――
仁は微かにその表情を曇らせながらやんわりとその手に自分の手を重ね…
「ッ、残念だが……俺は直接その事件の捜査には加わってはいない…
なので俺がお前に教えてやれることは現時点では特に――」
「そんなっ…、」
仁のコートを掴む葵の手は震え…
その表情にあからさまな失望の色を浮かべると
葵はガックリと肩を落とし…
「せっかく…母さんの事件に関して
何か新しい情報を得られると思ったのに…、」
「ッ…すまない…」
「………ううん。いいんだ…
ひとくんのせいじゃない。
ただ俺――何も分からないからさ…、
母さんが殺されたって事以外何も…、ッ、」
「………」
葵は項垂れたまま正面にいる仁の首元にトン…と頭を預け…
仁はそんな葵にかける言葉もないまま――
時間だけが二人を置いて過ぎていく…
「…6年……もう6年だよ…
母さんが殺されてから6年…」
「ッ…」
「なのに誰も…、ッ、、何も教えてはくれない…、
ねぇなんで…?
なんで母さんは…、ッ、殺されなきゃならなかったの…?」
「葵…」
「なんでなんだよ…ッ、、
しかもあんなヤツと再婚してすぐに殺されるだなんて…、
絶対アイツが…、ッ、何かしたに違いないのに…っ!」
「…あいつ…?」
俯きながら仁のコートを掴む葵の手が白みながらふるふると震え…
仁はそんな葵の肩に手を置き…
俯いている葵の様子を伺いながら、先ほど葵が吐き捨てた言葉を聞き返す
「アイツと言うのは…再婚相手の事か…?」
「ッ…そうだよ…
アイツが母さんを“罠に嵌めた”んだ…
だから母さんは…アイツのいう事を聞くしか…ッ、」
「…罠…?」
「ッ…、」
「それは一体どういう意味だ…?」
「………」
「葵…?」
仁は葵の肩を少し押し…
俯いている葵の顔を覗き見ようとしたその時
ブブブブブ…ブブブブブ…
「…?」
仁のコートのポケットからとバイブ音が聞こえ…
仁が何事かとポケットから携帯を取り出し、画面を見ると
そこには神崎の名前が表示されていて――
―――神崎さん…?このタイミングでの通話という事は
取引場所が何処か分かったのか…?
ピッ、
「はい。コチラ真壁――」
『ッ、すまん真壁…ッ、』
「ッ!?」
突然受話口から切羽詰まった神崎の声が聞こえ…
仁の表情がピキッと強張る
「神崎さん…?一体どうしたんですか!?」
『気をつけろ真壁っ…罠だ!
コイツ等初めからお前を――がはッ、』
「神崎さんッ!?」
「ど…どうかしたの?!ひとくん…
急に大声なんか上げて――」
『…真壁 仁…だな…?』
「ッ!?」
神崎と入れ替わるように聞こえて来た聞き覚えのない声に
仁の緊張感は高まる
「ッ…誰だ。」
『俺の事はいい……おっと~他の仲間に助けを求めようとしても無駄だぞ…?
全員引き上げさせたからな…』
「なに…ッ?!」
仁がチラリと周りを伺い見ると…
確かに周りに居るはずの捜査官の姿は何処にもなくて――
「ッ何をした。」
『フッ…そんな事はどうでもいい…
それよりも先ずは――
俺達と一緒に来てもらおうか…?真壁 仁…』
「ッ何を言って…」
「…動くな。」
「ッ!?」
「ひとくん…ッ、」
コツ…っと固いものが仁の背中に押し付けられ…
仁がゆっくりと後ろに視線を向けると――
そこには黒い服装に黒いキャップを目深に被った二人の男が
口元に薄ら笑いを浮かべながら立っていた…
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