アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
64にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
64
-
オレたちは休憩も兼ねてたから、川辺の平らな石に座って、軽くメシ食いながら状況を話した。
「もっと下流に近いトコの方が、ウッディコングの襲撃も多かった」
「休む間もなかったもんな」
オレとタオの意見を、数人の魔法使いも座って聞く。
その中にミーハがいんのが、ちょっと嬉しい。残念ながら他の仲間にガッチリガードされてるっぽくて、オレらの近くには来ねぇけど、一緒にいるってだけで嬉しい。
ミーハの存在を意識して、あんまあからさまに目を向けねぇよう努力して。まるで、初恋したてのガキみてーだ。
「もっと山のふもとになると、ウッディベアもいたな」
オレらの報告に、静かにうなずく魔法使いたち。
さすが、首都を拠点にするエリートたちらしい。周辺のモンスターの動向も気になるようだ。
「あのまま放置すりゃ、荒野に降りて来るんじゃねーか?」
そんなオレらの感想を聞いて、みんなで顔をしかめてた。
「これはのんびりしていられない」
「早く巣を見つけ、ボスがいるなら討伐しなくては……!」
ざわめく魔法使いたちは、おおむね同じ意見みてーだ。ミーハもちょっとこわばった顔で、黙ってこくりとうなずいてる。
やがてリーダーらしき魔法使いが、オレらにも手伝うよう言って来た。
「案内を」
上から目線で言われるとムカッとしてくるけど、せっかくの機会を、こんなことでふいにしたくねぇ。
屋敷に面会を申し込んでも、いつだって門前払いだったし、今後も多分それは変わんねーんだろう。今この時しか、話す機会はねぇような気がした。
いくら話をしたって、いくら「思い出せ」って頼んだって、オレのことを思い出してくれるとは限らねぇ。
余計辛くなるだけかも。
自分でもどうしてぇのか分かんなかったけど、せめてあの恋人の証をどうしたか、本人の口から聞きたかった。
魔法使いたちは、ここに残るヤツとオレらと一緒に行くヤツ、2手にどうやら分かれるらしい。
ここに残るヤツがいるなら、馬を預けてぇ。
リーダー各の男にそんな話をしてると、ハマー(馬)がぶるっと鼻を鳴らしながら、ミーハにずいっと顔を寄せた。
「ふおっ!」
ビビって声を上げるミーハを、ざっと仲間の魔法使いが取り囲む。
「あ……すんません」
謝って手綱を引きつつミーハを見ると、いつも通りの様子でキョドってて、ふいに胸が痛くなった。
「ハマー、お前も……」
ミーハのこと覚えてたんだな。そんで、同じく忘れられちまったか。
さすがに口には出せなくて、手綱を引いてミーハから離し、ここに残る方の魔法使いたちに預ける。
「元気出せって」
タオにぼそっと囁かれ、脇腹をヒジ打ちされたけど、「あー」としか返事できねぇ。
ちらちらとミーハを見てるハマー(馬)が不憫で、でもそれは多分オレも一緒で、ヤベェなと思った。
一緒にいてぇのに、いたくねぇ。
顔を見て声を聞いて、そんだけでもって思ってたハズなのに、やっぱそんだけじゃ足りねぇんだって思い知る。
「……まずは、コングだ」
「おー、その意気だ!」
アーマー越しにべしっと背中を叩かれて、痛くねーけど「痛ぇよ」とこぼす。タオもきっと分かってんだろう。「ワリーワリー」って謝る声も軽かった。
ミーハとリーダー格の男、それともう1人の魔法使い、それとオレらを足した5人で、一緒に川沿いをゆっくり下った。
ちらちら現れるウッディコングは、剣を抜くまでもなく、魔法でさくっと片付けられる。
「アイスアロー!」
「ウィンドカッター!」
一撃必殺で繰り出される魔法は、さすがエリートっつーか恐ろしく正確で、でもかなりオーバーキル気味だ。
剥ぎ取りのこととか、何も考えてなさそうだって分かる。
それは、そういうのが目的じゃねーからか? 誰も指摘しなかったんだろうか?
ミーハがいつもオーバーキル気味だったのも、元々はこのせいかと思った。
ただ、今回はオレらの方も、最初から剥ぎ取り目的じゃねぇ。油断なく周りを見回しながら、魔法使いたちと一緒に川沿いを下る。
時々足を踏み外しそうになるミーハからも、目が離せねぇ。
「おい、気ィつけろ」
「うおっ」って声がするたびに、後ろを振り返っては手を貸して支えてやる。
馬も嫌がる場所だから仕方ねーし、川辺つーのは大体不安定なモンだけど、他の2人が普通に歩いてんの見ると、やっぱミーハは鈍くせーんだろう。
「水ん中に落ちんなよ」
からかうように笑うと、「お、落ち……っ」ってドモりながら素直にうなずく。
落ちない、よっ。そんな風に言い返し、ぷうっとふくれっ面してた恋人はここにいねぇ。
ミーハの中にオレの記憶は残ってなくて、けどミーハはミーハのまま無邪気で、可愛くて、時々大声で喚きそうになる。
早くウッディコングの巣を見つけて、思い切り暴れてぇ気分。
握ったミーハの手を放し、剣の柄にそっと触れる。
ウッディコングの群れに周りを囲まれたのは、その直後のことだった。
「来るぞ!」
タオの声を聞くまでもなく、すらりと剣を握る。
「ミーハ、『氷矢』3連発!」
斜め後ろを指差して指示を出し、自分は軽くジャンプする。
「ふえっ? あっ、アイスアロー! アイスアロー! アイスアロー!」
ミーハが攻撃すんのを聞きながら、飛び掛かってくるコングの胸を突き差し、それを足蹴にして更にジャンプ。高いとこから剣を振りおろし、2匹まとめて始末する。
体が軽い。剣も軽い。
「ウィンドカッター!」
ミーハの声を拾いながら、着地と同時に回転し、1匹、2匹。
勝負はタオと2人の時より早く終わって、やっぱ魔法使いはスゲェなと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 102