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88にしおりをはさみました!
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88
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タオと目配せし合って、剣を持ったまま走り寄る。
ひらっと飛び上がり、デカブツのモンスターの頭部に乗り上げ、思い切り剣を突き下ろす。
頭から背中をずらっと覆ってる岩状のウロコは、思ったより厚みがありそうで固そうだ。これ、ちゃんと剣が通んのか? 固すぎて刃こぼれしそうで怖ぇ。
ギャアアアア。モンスターが悲鳴を上げ、ぶんぶんと頭を振り回す。オレの剣はあっさりと抜け、オレも簡単に振り落とされた。
「くそっ」
ストンと着地して、再びジャンプ。今度はモンスターの目を狙い、重力を使って斬り下ろす。
激しい動きのせいで、残念ながら狙いはギリギリ逸れちまったけど、目のすぐ側でざっくり確かな手ごたえがあって、初手としてはよしと思った。
一方のタオはっつーと、腹を狙ってるらしい。
びゅんびゅんと2本の剣を唸らせて、柔らかそうな腹に無数の攻撃を当てる。
モンスターが向きを変え、タオを踏みつぶそうと前足を上げるけど、それに捕まるヤツじゃねぇ。素早く腹の方に回り込み、更に攻撃してる様子は、さすがのスピードだ。
勿論、オレだってぼうっと見てた訳じゃねぇ。
再びジャンプしてモンスターの頭部に取りつき、頬の下やアゴ下を狙う。
想像以上にウロコが硬ぇ。前に戦ったピンキードラゴンより硬ぇ。それにデケェ。
「くらえっ」
勢いをつけて剣を差すと、岩みてーなウロコが飛んだ。その隙間を狙って更に突き刺し、「ギャアア」と悲鳴を上げるのを聞く。
ぶんぶんと頭部を振るモンスター。
たちまち振り落とされるけど、剣をしっかり突き刺せてたのが良かったみてーだ。
落とされる反動とオレの体重分が剣先にかかり、ざっくりと斬り下ろしながら、再び確かな手ごたえを得た。
「やれるぞ!」
「おう!」
タオの声が向こうから上がり、同時にモンスターの悲鳴も上がる。
グギャアアアッ!
さっきより一段と大きな悲鳴。モンスターが後ろ足で立ち上がり、短い前足をバタつかせる。
まずいと思ってとっさに飛び上がると、その直後、モンスターが前足を地面に突いて、ドゴーンと物凄い衝撃が起きた。
土埃が立ち上がり、風圧で飛ばされる。
タオは、なんて気にする余裕もねぇ。土埃を警戒してぎゅっと目を閉じ、どっちが上下か分かんねーまま、ぐるぐると宙を舞う。
両手で顔を庇いながら薄目を開けると、目前に迫った地面が見えた。
やべぇ、と息を詰め、最低限受け身を取るべく身構える。
ドウッ、と地面に打ち付けられた時は、正直息が詰まった。頭を庇いながら手足を使い、衝撃を流すべく地面を転がる。
「アル!」
「無事だ!」
タオの声に短く答えて起き上がると、モンスターがぐっと身構えんのが分かった。
ぐわっと威圧が飛び、耐え切れずにヒザを突く。
くそっ、と思って立ち上がると向こうでタオも立ち上がってて――そのタオの向こうで、ものすげーデカい翼がバサッと広げられるのが見えた。
鳥よりも、コウモリに似た翼だ。
モンスターの体と同じ、緑がかった焦げ茶色で、バサッバサッと羽ばたいてる。
今にも空を飛んで逃げそうで、させるか、と思った。
「逃がすか!」
タオも同じことを思ったみてーだ。土埃が更に舞う仲、双剣をひらめかせてモンスターの翼に斬りかかる。
オレも負けじと駆け寄ったけど、剣が届くより先に一際強い風をぶわっと起こして、モンスターが空中に浮かび上がった。
とっさに高くジャンプしたけど、足にも触れらんねーまま落下する。
オレらの上にデカい影を落とし、更に上昇するデカブツ。ヤツはやがて向きを変え、山のてっぺんとは違う方角に飛び去った。
「どこ行った?」
剣を収めながら訊くと、同じく双剣を鞘に戻しつつ、タオが「高地じゃねぇ?」って呟いた。
いつになく真剣な顔して、モンスターの飛び去った方向を睨んでる。
「高地……」
そう言われて思い浮かぶのは、ミーハとタオと共に訪れた、あの岩場だ。
高地のモンスターは、荒野や西山と比べてレベルが高ぇ。ミーハがいなくなった後も、修行としてタオと一緒に何度も行った。
あの高地で、あんなデカいモンスターなんか見た覚えねぇ。
けど、翼で移動できるんなら、そもそも縄張りとか生息地とか、あんま関係ねーのかも。
そういや、ミーハがかつて記憶喪失になったのも、ドラゴン退治のためにあの山で戦ってた時だって言ってたか?
不穏な想像に、ドクンと心臓が跳ねる。
「あれ……なんだったんだろーな」
ぼそりと呟くように尋ねると、タオはまだ真剣な顔のまま、「ドラゴンだろ」ってニヤッと笑った。
いつも通り自信満々って感じじゃねーけど、目は爛々と光ってて、すげー好戦的でぞくぞくする。
正直、まったく致命傷なんて与えらんなかったけど、無理だって絶望するには早過ぎる。
オレはさっき弾き落とした岩みてーなウロコを拾い上げ、「おし!」と気合たっぷりに声を上げた。
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