アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
48 首都到着編にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
48 首都到着編
-
首都に着いてまず行ったのは、公衆浴場だ。
旅の汚れを落とし、用意してた新しい服に着替え、爽やかさ満点でシーン家に向かう。
「魔法使いのシーン家」つったら有名らしくて、適当な通行人にダメ元で訊いたら、あっさりと道順を教えてくれた。
近付くと、目的の屋敷はすぐに分かった。なんせ、バカデカイ。
1つの路地の端から端まで、ずーっと灰色の塀が続いてる。塀と同じく中の屋敷も、石造りみてーで3~4階くらいありそうだったけど、何しろ塀が高すぎてよく見えねぇ。
どう見ても、ミーハの家族だけが住んでるって訳じゃなさそうだよな。
使用人とかは勿論だけど、一族全部とか集まってんじゃねーか?
予想以上にデカい家でビビらねーこともなかったけど、「首都でも権力を持ってる魔法使いの名門」って先入観があったから、まあこんなもんだろうと納得する。
門を叩くと、門番みて―なオッサンが出て来た。
「あの、ミーハ……シーン・ジュニアに会いたいんですけど」
「依頼ならちゃんとギルドを通せ」
うるさそうに手を払われて、はぁ!? って思ったけど、ぐっと我慢して冷静に告げる。
「いや、依頼じゃなくて、面会です」
そう言うと、オッサンはあからさまに顔をしかめた。
「紹介状は?」
って、手を突き出されてムカッとする。
なんで恋人に会うのに、紹介状なんか必要なんだ?
タオも同じことを思ったらしい。
「えーっ? ダチに会うのにも紹介状がいんのかー?」
けど、オッサンは「当たり前だ」つって、エラそうにふんと鼻を鳴らした。
「自己申告の『友達』ほど信用ならないものはない。世の中には1度言葉を交わしたくらいで、親しくして頂いたと勘違いする輩が多いからな」
「なっ!? オレ達はそんなんじゃ……」
思わず食って掛かっても、まるで相手にして貰えねぇ。
自己申告って。そりゃ、世の中には勘違いヤローもそりゃ、いるかも知んねーけど……オレ達は違う。
つーか、オレは……。
「とにかく、ミーハに話を通してくれ。アルとタオが会いに来た、って」
「そーだよ、言って貰えりゃ分かる」
2人でしばらくオッサンに食い下がったけど、「ダメだダメだ」の一点張りで、どうにも話が通じなかった。
こんなの、門前払いっていうんじゃねーか?
そりゃ、じーさんは手ごわそうだし、「迎えに来たぜ」「よし帰ろう」なんて、すんなり行くとは思ってなかったけどさ。
長期戦も覚悟してたけど――それは、じーさんを説得すんのに時間がかかるだろうと思ったからで。オレらが迎えに来たことさえ、本人に伝えて貰えねーとは思わなかった。
「貴様らのような庶民が、おいそれとお近付きになれるような方々ではない」
とか。
「品格が違う」
とか。意味が分かんねぇ。なんだそれ?
ミーハなんか……思いっきり庶民じゃねーか。
食い意地張ってるし。
好き嫌いねーし。
食べ物にも着る物にも、贅沢言わねーし――。
押し問答をいくら続けてもムダだと思い、オレらは一旦引くことにした。
紹介状があればいーんだろう? なら用意するまでだ。つっても、首都には他に知り合いもいねーから、取り敢えずはルナを頼るしかねぇ。
首都で天才剣士って名高い「黒の烈風」の口添えがありゃ、悔しいけど、紹介状の役目ぐらいはするんじゃねーか?
こっちじゃまだ顔が売れてねーとはいえ、「赤い閃光」もいるんだし。
ルナの家に向かいながら、苛立たしくため息をついてると、タオが難しい顔でぼそりと言った。
「ミーハ……やっぱ監禁されてんのかな」
ハッとした。
そうか、会わせてくれねーのには、そういう可能性もあるんだな。
つーか、そっちの可能性の方が高い。
薄暗い冷たい部屋に閉じ込められて、ひたすら呪文書を覚え込まされてんのかな? ミーハ……。
居ても立ってもいらんねーような気分で、今来た道を振り返る。
冷たい石塀に囲まれた灰色の冷たい石造りの屋敷が、ミーハを閉じ込める頑丈なオリのように見えた。
早くあそこから連れ出してやんねーと。
白い顔、泣きそうに眉を下げて、涙にくもる大きなつり目を思い出す。
嗚咽に震える肩、オレに縋り付く細い腕、「捨てないで」って泣かれた言葉。全部が鮮明で、忘れろったって忘れられる訳がねぇ。
……じわっと胸が痛む。
「急ぐぞ!」
ダッと駆け出したオレの後を、「おー!」とタオが追いかける。あっという間に抜かされて先に行かれちまったけど、そのまま競うように路地を駆けた。
金のこととか、安全がどうとか、余計なコト考えてのんびり来ちまった事、今更遅いけど悔やんでた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 102