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医務室にて
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犬養side
痛い。シンプルに痛い。
くっそー、あの10番絶対わざとだろ…。
「どう?目眩とか、頭痛とかは無い?」
医務室の女医が、俺を椅子に座らせるやいなや聞いてきた。
「全くありません!もう大丈夫なんで、試合に戻っていいですか?」
怪我なんて本当にどうでもいい。そんなことより早く試合に戻りたい。
それに、熊澤先生にかっこ悪いとこ見せちゃったし……。
だいたい、怪我自体はどうってことない。担架なんていらないって言ったのにあの人たちが乗せるって言ってきかないから。
大袈裟なんだよな。ただ血が出たぐらいで。
「まぁ待ちなさい。おでこ、血が出てるでしょ」
そう言って女医は、綿で俺の額を軽く拭っていく。
「…っ!」
綿に染み込んだ消毒液が傷口に滲みる。
と、その時、ドアの向こうでドタドタと誰かが急いでこちらに向かってくる音が聞こえた。
バタン!とドアが開き、そこに居たのは…
「熊澤先生!」
息を切らした熊澤先生は、俺と目が合うと、ギュッと目を瞑った。
そしてゆっくりと息を吐き、
「…よかった」
と一言。
それで回れ右して帰ろうとするから俺は慌てた。
「いや、ちょっと待ってください」
「なんだ?」
「心配して来てくれたんですよね」
と聞くと、熊澤先生は俺の方に向き直って
「ああ」
こくりと頷いた。
ま、マジかぁぁぁ。
あの熊澤先生が俺の事を心配してくれてる。
ヤバい、嬉しい。
思わず笑みがこぼれる。
「だが、どうやら軽い怪我のようでよかった」
相変わらずぶっきらぼうな態度だけど、俺のこと心配してくれてたんだ。
あわてて医務室に来るぐらいに。
「ありがとうございます!せんせ、俺、頑張りますね」
にっこりと笑って言うと、熊澤先生は大きく頷いた。
「思い切りやってこい」
手当が済んでガーゼを額に貼ったまま、俺はダッシュで医務室を出た。
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