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「…………………聞いてもすぐ答えないのは言いたくないから? なんで教えてくれないの? おれに話すのがやなの? それともその人のこと話すのがやだ?」
今度は逆におれが身を乗り出して、礼介くんは椅子の上で丸まる。たふたふの服にこもってる。お行儀悪いよ目解さん。
「子供にするような話じゃない」
「おれもう高校生だけど」
「うーん」
「あーあー。隠し事。悲しい。そうやって誤魔化されると変な想像しちゃうな」
「たとえば?」
袖をいじる礼介くんに、おれは考えながら言う。
「そこまで隠すんだからよっぽどでしょ。……いやいや、隠してんじゃん。はぐらかしすぎ。ってことは言えないこと。……疑問なんですよ礼介くん。小説は小説ってよく言うけど、女の人出てきたこと一度もないじゃん。名探偵がいつも一緒にいるのは小説家です。あれ、っていうことは、だよ。……っていう。……わかるよ礼介くん、罫くんのこと大好きだもんね。どうよおれの謎解き」
「マイナス五千点満点」
「やったあ満点」
「正確に不正解です。お見事」
わざと、礼介くんが言われたくないことで煽って、おれは答えを引きずり出す。
「罫くんじゃないの?」
「やめろよ気持ち悪い……。あのなあ、僕にそんな趣味はないよ」
「はいはい」
「ちゃんと女性です」
「だったら結婚出来たじゃん。マリーミー出来たじゃん。あっ、でも、本当は。あれですもんね。日本は同性婚禁止だから」
「……色々問題があったんだよ」
「法律上の問題とかな? うんうん、わかるー。超わかるー。マジヤバーい。セクマイ差別はんたーい」
「違う。…………信じてないだろ。その話し方やめなさい」
「へいへい。PayPay」
「…………事情があってそのときは結婚出来なかったんだよ。だから指輪だけ。……全部解決したら、一緒になろうと」
礼介くんは泣かない。やめてくれと懇願したあのときとは違う。思い出は思い出に。愛しさは懐かしさに。悲しみは慈しみに。無理矢理押し掛けて、頑なな心の扉をこじ開けて、外へ連れ出すのがおれの……幸多の仕事なら、この訪問カウンセリングは上手くいっている。
「解決しなかったの?」
「……………解決したけど、お互いやりたいことがあってね」
それで別々の道を、と名探偵は言った。そんな平凡な表現でいいんですか。愛してた人は拐われたんじゃないですか。怪人はまんまと逃げおおせたんじゃないですか。
「ってことは、最後は別れたの?」
「この話、終わり」
「っえぇ、…………っ!」
ちょっと、あと少しじゃないですか!
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