アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
9にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
9
-
1限目の国語の授業
先生の声が遠くに聞こえる。
気分が悪い
胸が苦しい
野過に、言ってしまったから。
全部しないって
HRの予鈴が聞こえた時
野過は小さくため息をついて
「また後で話そう」とだけ言うと
教室に戻った。
少ししてから俺も教室に向かった。
教室に入るとき
皆から見られる。
そりゃそうだ。
温厚で優しい…で有名な野過を怒らせたのだから。
俺は誰とも目を合わせないようにしながら自分の席へついた。
その直後、担任が入ってきて
みんなの視線からは開放された。
HRが終わってすぐ、ハルが俺の元へ来て、言いにくそうに口を開いた。
「…大丈夫か?何があったか…聞かない方がいい?」
と、ハルなりの配慮をしてくれたみたいで
その優しさに泣きたくなった。
「……ん、大丈夫。」だけ返して
それ以上何も言えなくて
俺は机に突っ伏したまま
1限目の国語の授業が始まって
今に至る。
全部しないの「全部」って言うのは
キスやセックスのことを指したつもりだった。
でも、この状態で俺は
一緒に下校……できるのか?
同じ教室にいることすらしんどいのに
……だって、視界に入るから
大好きな野過が居るから
いつの間にか目で追って
あの手に触れられたいとか触れたいとか
もっと、……凄いこともしたいとか
妄想してしまって、でもそれは実現できなくて
だからキツくてしんどくて
ならいっそ転校したほうが……とか、無理なんだけど……。
もう頭の中めちゃくちゃだ。
何度も妄想してた
付き合うずっと前から
好きになったその時から
野過に触れられることを。
初めてセックスした日もそうだった。
野過に家まで送って貰えて
じゃあバイバイと言った野過。
今日親が居ないんだ、だから、……セックスしないか
なんて言えるわけないよな
付き合ってるとはいえ、野過はノンケなんだから
さすがにセックスは……できない、よな
なによりそれを誘う勇気ないし
もしも誘いに乗ってくれたとしても
実際俺の裸を見て萎えて
別れようなんてなったらもっと無理だし
付き合えるだけで幸せなんだから
た、高望みは……
って、色々考えて バイバイを言うのを渋ってた時
「……浜松、今日家、1人?」
と、野過が言った。
「え……、うん、……なんで?」
という俺の問いかけに
野過は困ったように笑って
「上がってもいいかな」
と言ってくれたんだ。
そう、きっとあの時だって
野過は俺の気持ちを察して
それで…………だから
野過の意思じゃないんだ
その後も全部
俺がしたい時にいつも
野過が言ってくれて
それで……
俺、野過に無理させてたんだ。
……じゃあ、野過はなんで今日追いかけてきたんだろう。
もう別れればいいのに
俺なんか簡単に捨てれるだろうに。
もしかして
俺を変に振ったりしたら
男(俺)と付き合ってたって皆にバラされるのが嫌なんじゃないか
それか
まだ始まったばかりの1年、
今別れたら同じクラスで毎日顔合わすのが気まづくなるから……とか
きっと一番の理由は
俺が可哀想だから。だ。
野過は優しいから……──
キーンコーンカーンコーン
いつの間にか1限目は終わって
チャイムがなった
「浜松」
皆がザワザワと喋りだしたその時
俺の目の前に佇んだひとつの影。
その瞬間、教室が一瞬静まり返った。
……机に突っ伏していた俺は、ゆっくりと顔を上げた。
……いや、見る前から分かっていた
それが誰なのか。
「ちょっと、話したい」
目の前には、真剣な表情をうかべる野過の姿があった。
「……」
はっきり言って、嫌だ
行きたくない
いっその事振られた方が清々しくていい
でも振られたくない
もうどうしたいのか分からない
自分がどうなりたいのかわからない。
……でも
俺はゆっくりと立ち上がった。
見なくてもわかる、みんなの視線
先に歩き出した野過について行くようにして
おれは教室を出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 10