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18歳以上ですか?
改めまして。にしおりをはさみました!
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改めまして。
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移動した先は学校近くのファミレスで、男7人でその一角を陣取っているわけなんですが。
さっきから店内の視線が異様にこちらに集まっている状況です。
何でこんなに見られるんだろう。
なんて。
そんなの非凡人な皆さんのせいに決まってます。
先輩方4人は派手だし目立つし(あ、皆さん2年だそうです)、マコトは綺麗な顔してるし、まこっちゃんは硬派なイケメンだし。
そりゃこんなに美形が揃ってたらみんな見るよね。
しょうがないよねっ!!
もうそれは諦めたからいいけども!
さっきから憐れんだような視線が混じって飛んできてるのは、もはや気のせいではないだろう。
むしろこっちの視線の方が気になってしょうがない。
そりゃ、俺だけアウェイなのは自分でもわかってますよわかってるからいたたまれない気持ちになるんじゃないか。
はっきり言って帰りたくて仕方ありません。
とか言っても帰れませんけどね。
隣にはイチヤさん。
しかも、その反対側は壁。
これは絶対に帰れない。というかトイレに避難するのも難しい。
こんなに俺が悩んでいるというのに、誰一人として周りの視線に気付いていない非凡人な皆さんは、各々好きなように注文したり、ケータイを触ったりしている。
むむむ、と一人でむくれているとさっきから感じてた視線とはまた違う視線を感じた。
そっちに目を向けると思ってた通りそれはイチヤさんで、ちょっと心配そうな顔をしてこっちを見てた。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「だっ大丈夫ですっ!!」
言えない。
美形の集まる中、一人だけ平凡だから受ける視線が辛いんですなんて口が裂けても言えない。
しゅーんとしているとイチヤさんがふっと笑ったのがわかった。
イチヤさんって時々変なところで笑うよなって思ってジッと見てたら、優しく細められるその目にきゅうんって胸が締め付けられた。
「・・・あのー、2人の世界に浸ってるとこ悪いんだけど」
「え、」
正面を見れば、その声の主の、髪の毛半分ピンクの奇抜な先輩がちょっと呆れたような目をしてこっちを見ていた。
2人の世界って・・・!?
カーッと顔が熱くなるのがわかった。
何をいきなり!?って思って、でも何も言えないでいると隣から溜め息が聞こえる。
パッと見るとイチヤさんがちょっと不機嫌そうにしていて。
「そう思うんなら、邪魔すんなよギンジ」
「うっさい。ほら、何頼む?」
「あぁ?」
思いもよらないイチヤさんの発言に、何を言ってるんですかッ!と思わず心の中で突っ込んでしまった。(もちろん声には出せません)
しかし、ギンジと呼ばれたその先輩は、不機嫌なイチヤさんは全く気にならないらしく、完全に無視。
何か、すごい、この人。
しかも優しいんですけど。なんて思いながら、チョコアイスをお願いした。
髪の毛半分ドピンクだし、耳にはこれ以上ないくらいピアスついてるし、眉のとこと、鼻のとこと、唇にもピアスついてるし、正直めっちゃ怖いんだけど、見かけによらずいい人だなって思っていると、ギンジさんの視線が俺に注がれていることに気づく。
まさに興味津々と言うようなギンジさんのそれに段々と居心地が悪くなってきて、変に緊張してしまって手汗までかいてしまっている。
何を考えているのかサッパリだが、楽しそうなのは間違いない。
とうとう耐え切れなくなって、おずおずと口を開いた。
「あ、あの、何でしょうか・・・?」
「え、あー、ごめん!ついつい。なんかリョウチン可愛くてさー」
「か、かわ・・・?」
「リョウチン照れてるー?やっぱかわいい~ウサギみたい」
あはは~なんて笑いながらそう言うギンジさんに思わず目を見開いてしまう。
俺がかわいいとかっ!
どこをどう見たらそう思うのか非凡人の考えることは、凡人の俺にはワカリマセン・・・ッ!!
ていうかリョウチンとかウサギとか突っ込みたいのは山々だけど、そこまで辿りつけない。
「ギンジ、いい加減にしとけよ。稜太困ってんぞ」
「あ、ごめんリョウチン」
アワアワとしていると、イチヤさんの窘めるような声。
やっと出た助け舟に、言われ慣れない言葉のせいで困惑している脳内を宥めることが出来た。
ごめんと言う割にはカラカラと笑うギンジさんに、思わず心の中で溜め息をつく。
相変わらず注がれる視線に今度は何だろうと、ちょっと内心ビクビクしていると、ギンジさんの目が優しく細められる。
「改めまして、俺、井上銀司。よろしく」
「あ、森川稜太です。よろしくお願いします」
反射的にそう返すと、銀司さんは嬉しそうにニコーっと笑った。
あ、ちょっとかわいいかも。
なんて思っていれば、何故か自己紹介タイムとばかりに、銀司さんの隣に座ってたまこっちゃんのお兄さんもそれに便乗してくる。
「俺、雅宗な。よろしく稜太」
「あ、よろしくお願いします」
「こいつ、藤崎桐吾な」
「よろしくな」
「はい!」
ついでに、端っこに座ってたフジさんもマコトが紹介してくれた。
隣に座ってたイチヤさんは、ちょっとみんなに呆れつつ、でも優しい表情で良かったなって笑ってくれた。
これから関わりを持ってもいいんだって思ったら、なんだか心がくすぐったくて。
イチヤさんがグッと近くなった気がして、思わずほころんでしまった口元にイチヤさんは気付いたようで、ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。
それから、注文していたアイスも届き、ちょっとまったりとした時間を過ごしたあと、俺たちは別行動をとることになった。
せっかく仲良くなった先輩方ともうちょっと話したかった気持ちもあったんだけど。
でもなんと明日の昼休み屋上に弁当を食べに行く約束をしてしまったのだ。
まだ明日のことなのに、遠足前の小学生みたいにワクワクしている自分にちょっと呆れてしまった。
そして、今は俺とイチヤさんだけ。
みんなとは別行動でどこに向かってるかわからないけど、イチヤさんの後ろをついて来てる現状です。
元々は、イチヤさんと話すための約束だったはずだけど、和み過ぎてしまって当初の目的を忘れてしまっていた自分に叱咤する。
特に何か話すわけでもないけど、お昼みたいな気まずさがなくて、心の中で盛大に安堵の溜め息を吐いた。
どこに行くのかなって思いながら、その広い背中を見つめること数分。
とあるマンションの前でイチヤさんの足が止まる。
それにならって俺も足を止めた。
振り向くイチヤさんに、首を傾げているととんでもないことを言うイチヤさんに俺の心臓は飛び上がった。
『俺の家、ここなんだけど。寄ってくよな?』
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