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あのとき、ここで(シルヴィ視点)にしおりをはさみました!
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あのとき、ここで(シルヴィ視点)
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最初に聞いたときは耳を疑った。
だって、ありえないことだから。
巫女が拐われたなんて一大事で、捜索隊を編成するのは当たり前だと思ってた。
なのに、
「アイルを、捜さない…?」
「さっき決定したみたいだな」
「どうして?!」
国王をはじめ、貴族の面々が決めたのは、アイルを捜さないということ。しかも、そもそもアイルという存在すらなかったことにするつもりらしい。
どうしてそんな極端なことが決定されたのか分からない。
いくら奥の殿の巫女がよく知られていない存在だからって、ないことにするなんて、そんなの。
「ルーシェス!あなたそれで引き下がるの?!」
「俺に決定権はないだろ。なんていったって、『巫女様』に口も利けない身分なもので」
「…うっ、そのことは謝ったじゃない…」
でも、ルーシェスの言うことは正しい。
結局騎士は、身分ある者に逆らうことなどできない。
それはよく分かってる。
私の、せいだ…
私が、アイルを独りぼっちにさせたから。
だから、拐われた。
あのとき一緒に逃げればよかった。
「…私、何とかする。絶対、諦めたりしないんだから…!!ルーシェスはそこで待ってれば…っ」
「誰が諦めてるって?」
「え?」
「俺は一人でもアイルを捜しに行く」
「…!」
スッと眇められた目は、とても冷えていて、でも、火傷しそうなほど燃えているような気がした。
前から思っていたけれど…この人、少し怖いかもしれない。
…私に卵をぶつけられたことも根に持ってるみたいだし…
「いくらなんでも一人じゃ無理よ…ちょ、ちょっと待ってて。私、お父様のところに話しに行くから!」
「あんたを此処に押し込んで地位を固めた奴に何を話すんだ?」
「う、うるさいわね!人の親に何てこと言うのよ!」
怖いけど、いちいちムカつく!
確かにお父様は私の意見を無視するような人だけど…でも…
ううん、だからこそ、「私」にしか出来ないことがある。
その日、敵対する貴族に突然嫁ぐと言い出した私に絶句する父の姿が見られた。
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