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気持ちの行方 5にしおりをはさみました!
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気持ちの行方 5
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side Ryu
俺の腕の中で寝息をたてる白川をそっと抱き上げ、敷かれてある布団に横たわらせた。
さらりと髪を撫でると、身じろぎ手のひらにすり寄ってくる仕草に、思わず笑みが零れる。
頭を撫でると気持ちよさそうな顔をするコイツは、まるで猫みたいだな、とふと思った。
警戒心が強く、なかなか懐かない。だけど、ふいに警戒を解きすり寄ってくる。
まさに、猫。
触り心地のいい髪を撫で、じっと顔を見つめる。
自分の体に色んなものを溜め込み背負うコイツを、俺は無性に支えてやりたいと強く思う。
白夜を見つけたあの日、俺は偶然にも仕事で南区を訪れていた。
母親の病状が悪化しずっと病院にいるという白川を想い、そぼにいてやりたくて必死に仕事を片付け、そして今から病院に向かおうとしていた所だった。
バイクを停めてある駐車場まで歩いていた俺は、白夜と白川は同一人物なんじゃないかと確信していた。
駐車場へ行く途中に、白夜がマメを見つけた路地がある。
近づくと、ふいに耳に届く声。
その声が奏でるメロディーにハッとした俺は、その声のもとへ足早に駆け寄った。
白夜の姿で口ずさむその歌は、白川が歌っていたもの。
だからその姿の白夜に、白川と声をかけた。逃げる白川を追い、突然の雨が白川を暴いていくのをじっと見つめた。
だんだんと現れる銀髪。やっと捕まえた”白夜”に、胸が打ち震えた。
今は安らかな寝息をたて眠る白川。
この数日間のことを思うと、こいつはどれだけ悲しい思いをしたのか、どれだけ追い詰められていたのかと苦しくなる。
包帯を巻く左手首。
病院で良和さんに呼び止められ、出来るなら白川のそばに居てあげてほしいと言われ、元からそのつもりですと返すと、真剣な表情の良和さんは可能性の話をした。
聖夜くんにとって唯一の肉親である母親が亡くなり、見ていて危うい彼は、もしかしたら自ら命を絶とうとするかもしれない──と。
まさかとも思ったが、ありえないことじゃないと思ったのは、白川の覇気のなさだった。
見ていてとても不安定で、やはり一人には出来ないと思った。
あのときのことを思うと、本当に胸が凍る。
白川をバスルームへ促したあと寝室へと行き、着替えを持ち再びバスルームに戻った俺は、着替えをおいとくと置いておくと声をかけた。
何度か名前を呼びかけるが反応はなく、まさか、と俺はバスルームの扉を開けた。
目に映ったのは、カミソリの刃を手首にあてている光景ーーー。
「死にたい、なんて…」
どんな思いでそんな言葉を口にしたのか。
「白川……俺はずっとお前のそばにいるから、だから……居なくなるな……」
白川には、まだ何か闇がある気がしてならない。
あの後見人だという人物も気になる。
病室で俺を見た瞬間、品定めでもするような視線。
ほんの一瞬のその視線を、俺は見逃さなかった。
……もう一度、調べてみるか。
俺も白川の横に寝転がり、白川の体を抱きしめ、眠った──……。
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