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-黒澤side27-にしおりをはさみました!
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-黒澤side27-
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…そして話は7年後、現在に戻る。
「おはよーごぜーまー……」
「うっわ……煙草くっさっ……何?髪の毛もボッサボサじゃない……クロちゃん超不潔!最っ悪!近づかないで……。」
「あーひでぇ言われようだな。」
現在は、自宅から車で30分ほどかかる別の学校に転勤し、相も変わらず数学教師をしている。
あのオカマ保健医、白鳥尚生てんてーも同じ転勤先で、何の因果か十年近くの付き合いになる。
「はぁー頭いてぇ……。」
「また二日酔い??もー…貴方離婚してから更にボロッボロじゃない……今日から3年担当なのにどうすんのよ……。ああもう見てらんない!」
相変わらずこんな調子の白鳥先生は、俺の世話係みたいになっている。今じゃ熟年夫婦だーなどと学校中の噂だ。
過去の栄光を語り始めればあとは老けていくだけ、とよく言ったものだが、あんなにも俺が熱血教師だったことはもう、白鳥先生しか知らない事実なのだ。
……ずっと昔から、俺は実家の家柄もあり大企業の一人娘と無理矢理見合い話を持ちかけられていたが、どうしても玉置のことが頭から離れず断り続けていた。
だがその玉置も黙って姿を消して7年だ。あまりにも不毛すぎる自分が嫌になり、毎晩酒を煽って何もかもどうでもよくなった俺は、今までのことは嘘のようにあっさりと承諾し、スピード結婚。そんな男女の間に愛情など芽生えるわけもなく、たったの三ヶ月で離婚。32にしてバツイチ、両親とは絶縁した。
災難続きで完全にひねくれた俺は、生徒への熱意も消えてしまっていた。……人間、ここまで落ちぶれるものかと自分でも思う。
今の俺は、ただのつまんねー数学教師だ。受験に必要な範囲を生徒に教えて終わり。深く干渉せず、ただ淡々と仕事をこなす一公務員でしかない。例え、世間から批判されたとしてもそれでいい、これが俺のやり方だ。……と、そう思っていたのに。
「なんで俺が3年なんすか……校長は絶対俺を担任にしねぇって言ってたのに、担任な上しかも受験生って……ああ、かわいそうになーB組。」
「クロちゃんがいつまでもそんなだから、あえて3年に当てたそうよ?校長もこんな掛けよくできたわよね……思い切りすぎで私が変な汗かいてきたわ。」
花柄のハンカチで汗を押さえながら、校長から預かったと渡された3年の名簿。そのほとんどのやつがチャラそうで、いかにも問題クラスといった感じだ。
「お、一人真面目そうなやついるじゃねぇか。片井守?あー確か医者の息子で全国テスト1位だった奴か。」
「あなたもいいお家柄のはずなんですけどねー?」
「あー……聞こえない聞こえない。」
ぱっと一番下を見ると、留年生で如何にも問題児そうな奴が写っていた。金髪にピンクのメッシュ……逆にこれで留年してでも学校に来ようという気になったこいつがすげぇ。
「柳原真尋……やべぇなこいつ。」
「その子はねー?私の大事な生徒なの。ほんっとうによろしく頼むわよ?」
「大事な生徒?あんた保健医じゃないですか。」
「これでも色々あって、保健室登校してた子だからね。思い入れが深いのよ。見た目で偏見しないクロちゃんならきっとうまくやれるわ。」
心底めんどくせぇ、と思っていると白鳥先生のデコピンをくらった。
「昔みたいに熱くなれとは言わない。子供なんて自分で勝手に成長していくものだからね。…ただほんの少しの後押しが教師の仕事だと思うの。」
「別に俺でなくったって……」
「保健医にはある程度限界があるし、クロちゃんの本当の洞察力を知っているのは私だけだから…それを活かしてほしい。本当にいい子だからお願い。」
そう言い放った白鳥先生の目は真剣そのもので、まるで玉置明をどうにかしてやりたいと熱くなっていた頃の俺のようだった。
「……何そんなに熱くなってんのか知らないですけど、教え子に一喜一憂させられるのはもう疲れたんだよ。副担任にでも頼んでくれ。」
まだ何か言いたそうに白鳥先生は手を伸ばしたが、それ以上は何も言わなかった。
「まぁ仕事はしますよー、必要最低限の。」
「クロちゃん……。」
最悪な1年の幕開けだ、と思いながら深いため息をついて、重い教科書の箱と出席簿を渋々持って3年B組の教室へと向かった。
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