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僕の幸福理論にしおりをはさみました!
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僕の幸福理論
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「……とっくに知ってる。何かがおかしいのも、先生が何か隠してるのも。」
頭の中では、これ以上言っちゃいけないともう一人の僕が言っていた。
それでも何故か、止めようがなかった。
「でも、だからって僕に何が出来るの?先生は僕のためにこんなにも頑張ってるのに、これ以上どう迷惑をかけるの?」
聞きたい。でも聞かない。
でも、だって、それがきっと正解。
「…おかしいことぐらい、ずっと前から気づいてる。学校に行きたいのに、学校のことを考えると震えが止まらない。ヒトミのことを考えると胸がおかしいくらい苦しい。涙すら出てくる時もある。会いたいなんて気持ちじゃないことぐらい分かる。さっきなんて、窓から景色を覗いただけなのに足が震えて立っていられなかった。」
理由はきっと、先生が知ってる。
「知りたいよ。でも……じゃあ、どうやって聞けばいいの?僕が目を覚ましてからずっと一人で何かを抱え続けて、それでも僕のために笑う先生に、僕はどうやって聞けばいいの?」
堰を切ったように言葉が雪崩てくる。
「聞けないよっ…」
言葉に巻き込まれて、涙まで出てきた。
そのまま声を殺して泣く僕を、アラシは静かに見ていた。
「…俺に聞けばいいんじャナァイ?」
「……え?」
アラシに?
「…知ってるの?」
僕がそう言っても、アラシは目を逸らさなかった。
アラシは知ってる。
「保健医からは言わないように口止めされてる。でも、俺はお前の意思で決めればいいと思ってるシ。」
やっぱり言いたくなかったんだ、先生。
聞きたい。
聞きたい。
でも──。
「でも、先生は…」
「決めンのは周りじャねェ。テメェ自身だロ、アズマ。」
アラシのその一言に、僕は顔を上げた。
「……聞きたい。」
そう言うと、アラシは無言で僕の頭に手を置いて、それから静かに言い放った。
「…屋上から落ちたんだ。
ヒトミからのイジメで苦しんでナ。」
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