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甘えん坊な王子様にしおりをはさみました!
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甘えん坊な王子様
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腰に回った腕に僅かに力が籠もる。
「ならば、王子はいらん。カティアスと呼べ」
「え、無理です」
「む、何故だ。俺が良いと言っているのに」
そんな風に呼んだら、このお城から追い出されてしまう気がする。困った、どうしよう。
どうも俺は弟属性の人に弱い気がする。
しかし呼び捨ては無理だとわかって貰わないと…。
「ユタカ」
「…っ、カティアス……さん」
「む?…まぁ、良いか。…いや、待て。試しに、カティアスくんと呼んでくれないか」
「え?あ、はい。えーと、か、カティアスくん…」
呼んだ途端、花が咲き誇るように微笑まれた。
ダメだ。負けた。勝てるわけない。凄く可愛い。
そんな風に嬉しそうに微笑まれたら、何でも従いたくなってしまう。
「イイ…。何だか…こう、グッとくる。これからは、そう呼んでくれ」
よくわからないけれど、頷いた。
カティアスさん改め、カティアスくんがこんなことで喜んでくれるなら。
擦り寄ってくる頭を撫で、その感触を楽しむ。きっと俺は、凄く贅沢なことをしているんだろうなぁ。
綺麗で格好良くて、でも凄く可愛くて、優しい王子様。
こんな完璧な人の傍にいられる自分は、贅沢者だ。幸せすぎて怖くなる。
「あの、カティアスくん」
「何だ、ユタカ」
俺、いつまでここにいて良いですか?
もしかして俺は貴方の邪魔をしていませんか?
こんなに良くして貰っているのに、俺は貴方に返せるものが何もない。
「……隣町は、どうでしたか?」
聞きたいことも言いたいことも、怖くて口には出来なかった。
笑ったつもりだけど、笑顔はちゃんと作れているだろうか。
もし変なことを聞いて、この幸せな時間が壊れてしまったら…。
カティアスくんが優しいと知っているけれど、幸せがとても壊れやすいモノだということも知っている。もう少し…もう少しだけ…この時間の中にいたい。
「む?あぁ、忘れていた。お前に土産があったのだった」
「お土産?俺に、ですか?」
「確か、ここに…」
良いながら胸元のポケットを漁る。そして、あったあったと取り出した物を見せてくれた。
それは細い革紐にぶら下がった、濃い緑色の石のペンダントだった。
「綺麗…この石、カティアスくんの瞳の色と同じだ…」
「あぁ、俺が留守にするときは、これが俺の替わりだ。これなら心細くないだろう?」
何て…優しい人なんだろう。
そんなことまで気にしてくれるなんて。
嬉しさに泣きそうになるのを堪えると、顔が熱くなった。今、俺の顔は真っ赤に染まっているだろう。
人の優しさが、こんなに嬉しくて苦しいものだなんて。
「…嬉しい、です。ありがとう、カティアスくん」
「うむ。礼なら言葉より…」
見上げてくる瞳に、とろりとした甘さを感じてドキリとする。更に伸びてきた指先が、頬を撫でた。
何だろう。何で、こんなにドキドキするんだろう。
「口付…」
「王子ー、ユタさーん、ごはんですよー」
「っ!!」
その瞳に吸い込まれるように顔を近付けようとしたとき、大きな音を立ててアンバーさんが入ってきた。
驚いて慌ててカティアスくんから離れてしまい、彼の頭を落としてしまった。大丈夫だろうかと、恐る恐る視線を向けると、苦々しい顔でアンバーさんを見るカティアスくん。
……絨毯があっても、やっぱり痛かったのかな。
「アンバー……お前、ワザとか?ワザとやっているんだろう」
「はー?意味わかんないこと言わないで下さーい。ユタさん、そんなの放っといて、ごはん行きましょー」
「え……」
困惑する俺より先に立ち上がったカティアスくんが、不機嫌そうに俺の首にペンダントをかける。
拗ねたようなその顔が、とても可愛かった。
もっと甘えたかったのかな?
「カティアスくん、食事の後…さっきの続きをしましょうか」
「…っ!…う、む。約束だぞ。絶対だからな!」
「ふふ、はい」
微笑むとカティアスくんは、早々に部屋を出て行ってしまった。
俺も後を追おうと立ち上がる。扉の近くで待っていてくれたアンバーさんを見ると、呆れたような顔をしていた。
「あんな事言って…良いんですか-?」
「あんな事?」
「さっきの続きって…合意なら別に止めませんけど…」
「?ペンダントを頂いたので、お礼をしないと」
何か変だろうか。不思議に思って、首を傾げる。
「ユタさんがお礼で出来ちゃう人だったとはー…」
「人前ではさすがに恥ずかしいですけど」
「そりゃーそうでしょー」
「昔は優人ともしてましたし」
「えええっ!?それ、問題じゃ」
「?弟ですから」
「いやー、それ関係ないでしょー」
こっちじゃ、しないものなのかな?
「うーん…おでこにキスは、こちらじゃやらないんですね…。カティアスくん、どうしよう」
「……あー…あああー………王子、どんまい」
アンバーさんは苦笑いして、ユタさんのお礼の仕方で大丈夫ですよーと言ってくれた。
こちらの文化も学ばないといけないな。
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