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猫の、気持ち。【憂心目線】にしおりをはさみました!
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猫の、気持ち。【憂心目線】
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「よし、着いたぞー」
「ありがとうございました」
「いや、オレの方こそ。」
「え?」
「弁当、楽しみにしてる」
「はい!」
「じゃあ、終わったら連絡して」
「了解です」
「よし、じゃな!」
「はい、また後で」
ブゥーン
車はおれを置いて去って行った。
時刻はまだ9時前。
授業まではかなり時間がある。
あの子は、来ているだろうか。
気まずくて来ていないかな。
出会ったのは去年の春頃。
あの日は確か、ぼーっとしながら歩いてて…
ププー!!!!
「危ないっ!!!」
「ううわっ!」
大きなクラクションとともに体を後ろに持って行かれた
「何やってんだ危ないだろ!?」
「え…あ…ごめん…」
誰だこの子…幼いな…
「どこ行くつもりだったわけ?」
「えっと、大学…」
「大学…って、そこの?」
「うん、まあ…」
「何年?」
なんだ…?
「もうすぐ3年…」
「え!?まじで!?同い年じゃん!!!俺もそこの大学の2年!」
さっきまですごく怒っていたはずの彼の顔が、ころっと変わって嬉しそうな笑顔になった。
おれはまんまとそのギャップにやられてしまったらしく、片思いの生活が始まった。
まさしく一目惚れだった。
それから彼と友達になった。
毎日話して、お互いの家に行き来するようになって、どうせなら一緒に住もうかって話になるのはお金のない学生同士そんなに気にすることはなく、すぐに一緒に暮らし始めた。
だけどおれには問題ができた。
距離が近くなるに連れ、彼に触れられたらどんなに良いだろう、彼の手を握ることが、彼の体を抱きしめることができたなら、どんなに幸せだろうという想いしか考えられなくなってしまって、勢い余って言ってしまったのだ。
「好き。」
あれは自分の我慢が足りなかったんだろうか。我慢していればもう少しくらい、一緒に暮らしていられたかな。せめて、考えてから告白すれば良かったのか……今更そんなこと思ったって…
「はあ…」
自然とため息が出た。
こういう時は深呼吸…
「すぅー…はぁー…すぅー…はぁー…ん?なんの匂い…あ…」
家を出る時に冬人さんが寒いから…と言って貸してくれたマフラーの匂いが鼻を掠めて、何故だか心があったかくなった気がした。
いい匂い…ここに冬人さんが居るみたいだ…
冬人さんはあったかくて、優しい人だ。会話しているだけで、嫌なことを全て忘れさせてくれる。
今朝の、そういう笑い方はやめようって言われたとき、内心すごく焦った。無理やり笑っていたのは確かだったけど、それを出会って2日目の人に指摘されるとは思ってもみなくて、驚きと、言われたことが図星過ぎて思わず本当に泣いてしまった。情けないな…
冬人さんは、ほんとはどんな人なんだろう。家に住まわせてくれるなんて思ってもみなかったな…お弁当美味しいと思ってくれるかな…あれ、始めは何考えてたんだっけ?
彼のことを考えていたはずなのに、いつの間にか問題がすり替わっていた。
どきっ
今のは、何…?
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