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116.✩取られるにしおりをはさみました!
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116.✩取られる
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✩✩✩✩
突然かかってきた電話に、楓さんは眉を顰めて嫌そうな顔をして出た。
電話からは女の人の声が聞こえてきて、俺は邪魔しないように寝室に行こうとすると、グイッと後ろから腕を引かれた。倒れるようにソファーに座ると楓さんが俺の肩に腕を回してきた。そのまま電話の内容が聞こえるくらい引き寄せられた。
さすがに聞いちゃうのはやばいよね。
そう思ってすぐに離れようとしたけど楓さんの腕が良しとしなかった。
仕方なく楓さんの隣で電話が終わるのを待つ。電話相手はかなり楓さんと親しい間柄らしい。楓さんの方は少し気を張っているみたいだけど。
眠気が戻ってきてぼーっとする頭で聞こえてきた単語をそれとなく繋げていると、いつの間にか電話が終わっていた。
言葉を発しないでいる楓さんをどうしたのかと見上げると、楓さんはスマホを握りしめたまま顔を青くさせていた。
「………楓さん?大丈夫?」
「大丈夫………じゃないな。結構やばい」
何がやばいのか俺には全然分からなかったけど、楓さんがあまりに深刻そうに言ったからとりあえず何かが大変だってことは分かった。
「俺ね、姉が三人いて、さっきの電話が三番目の姉でね。普段は海外を飛び回ってるんだけど、一週間後に日本に戻ってくるらしくてさ」
「うん?良かったね?」
「帰ってくるのはいいんだけとね。実家じゃなくて、いつも俺の所に泊まるの」
「そうなの?あっ、じゃあ俺も会えるかな?楽しみ!」
初めて楓さんの家族に会える、と喜ぶ俺とは対照的に楓さんはどこか浮かない顔をしていた。
「俺は全然楽しみじゃないんだけどね………」
………どうして?と聞きそうになって言葉を飲み込む。
もしかしたら楓さんはもう大人だし、家族に会えるくらいじゃ喜ばないのかも。
そういえば、今の俺は自分の両親に会ったことがない。海外にいて、俺が入院しているとき知らない間に一度来ていたようだけど。
俺の両親ってどんな人たちなんだろう、会ってみたいな、と思いめぐらせていると、楓さんが俺の肩に寄りかかってきた。
「………あいつが来ると、旭を取られるから嫌なんだよ」
楓さんはそう言ってちらりと俺を見ると深いため息をついた。
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