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男と女にしおりをはさみました!
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男と女
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そして、念願の山盛りホイップクリームのカフェラテを、
生憎、貴仁からのラブコールで飲み損ねる事もなく
ゆっくり堪能した帰り際、
何か思うところが有ると言わんばかりの表情でけんちゃんが呼び止めて言ってきた。
「……龍ちゃん、別に話したくないならいいけど……ギリギリまで我慢する癖無くしなさいって言ったの覚えてる?」
ドキリ。と胸を掴まれた気分を味わったのは龍希である。
さっき相談した話以外の事を指しているのは明らかだったからだ。
胸の中に先程の甘い甘いカフェラテとは真逆の、
苦い深煎りの珈琲のような渦が生まれた
それは皮肉にも、貴仁が好きそうな苦さの珈琲だろうなと感じた。
けれども、そこに無理矢理ホイップクリーム足すかのように、頑張って平静を装うと
「それが何ー?」などと少しおどけてみせた。
すると、きっとある程度思った通りの反応だったのだろう。はいはい。と軽くそれをあしらうと、
「まぁ、いいわ。……はい、これチーズケーキ。貴仁さんと食べなさいな。」
と、けんちゃんは龍希の目の前へ持ち手の付いた小さめのケーキ箱を差し出した。
「……ん。ありがとう。」
何かを言わんとするようなけんちゃんの瞳を、あまり凝視できなかった龍希だが、
それでも視線を合わせて礼を言う。
彼らしい、と言えばとても彼らしい。
そして、またね!と店を後にすると
「何でもお見通しだなぁ。」
と、呟きながら、手にした箱にほのかな重さを感じる。
けんちゃんは全てお見通しだ。
龍希は、確かに今日話した事よりも気にしている事があった。
でも、それは男の自分が口に出すには何だか酷く格好悪く感じて言えなかったし、
何よりその悩みこそ、今の不安の全ての根元で
本当にしんどい事こそ、相談出来ない龍希という人間には、やはり今日も話す事は無理だったという事だ。
その悩みと言うのは女性であった。
最近、仕事の話と言っては貴仁を訪ねてくる女性であった。
その女性は、龍希が以前、玄関先で見たあの女性だ。
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