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俺だけが知っていればいいこと 3にしおりをはさみました!
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俺だけが知っていればいいこと 3
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俺よりも背が高くて背中も大きいくせに、その体を有効に活かすどころかいつも座って本を読んでいる牧野。彼の後ろを歩きながら、じっと見つめる。
「牧野って、スポーツしねーの?」
渡り廊下を歩いている時だった。牧野は面倒くさそうにこちらをチラリと見たあと「興味ない。」とだけ言った。相変わらず、短い返答だ。
「もったいないな、お前。」
今度は、こちらを振り返ることもなくただ前を歩き進める牧野。
「俺が牧野だったら、そうだな……バスケでもするかな。牧野背が高いし、顔もイケメンだからモテるだろうな。」
何も喋らずに歩き続けるという状況に耐え切れない俺は、ペラペラとどうでもいいことを話す。当然、反応も何もない。
「……。」
あれ?
「牧野?」
突然、俺の目の前で立ち止まった。
「日坂。」
「なーに?」
「チャラい。」
いきなり何を言い出すのかと思ったら……チャラい?
「なんだそれ、マジ笑える。」
俺は腹を抱えて笑った。牧野は怪訝な顔でことらを見ている。
「何故笑う。」
「いや、牧野から「チャラい。」って言われる日が来るとか思ってなかったからさ。」
最初は戸惑っていた牧野も、俺につられたのか頬が緩んだ。
「お前が、言わせたんだろう。」
やっぱり、牧野が微笑むと綺麗だ。
「そうだな。わりー。」
俺も微笑み返して牧野をまっすぐ見た。
「俺、笑ってる時の牧野の顔が好きだな。」
牧野の胸に片手で軽く叩いた。
「もっと笑え。牧野。」
強い風が、吹く。
牧野の前髪が横に流されていく。
「ああ、そうだな。」
穏やかな顔で牧野はそう言った。
それと同時に、自分の中で心臓が高鳴るのを感じた。
この穏やかな表情も、俺だけが知っていればいいこと。
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