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4にしおりをはさみました!
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4
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山田くんは真っ赤に顔を染め上げたまま、手を宙にさまよわせたかと思えば、ハッとしたように何かに気づいて携帯を取り出した。
「っ!こっこれ」
「?」
「っだからこれ、俺の番号…」
山田くんは ずいっ と俺の目の前に携帯の画面を押し出した。
状況から考えて
これはもしやメアド交換…的な?
山田くんの顔を見れば、赤らめた頬に少し不安気な瞳があった。たぶん、俺の予想で間違いないだろう。俺は、俺自身の携帯を取り出し、山田くんの携帯に向けた。
「えっと、赤外線あるかな?」
「!あ、ある、まて」
山田くんは慌てたように携帯の操作をし始めた。「ゆっくりでいい」と声をかけようかと思ったが、その顔は真剣そのもので、なんとなくそのままにした。
「俺…受信でいいのか…?」
作業が終わったのかこちらを見る山田くん
「あ?うん、じゃあ俺送るね」
互いの携帯を重ねるように近づける。
少しの間の後、送信完了という文字が画面に浮かび上がった。
「…これでよし、後からメールくれるかな?それで登録しとくから」
「あぁ、もちろんだ」
山田くんは大事そうに携帯を右ぽっけに閉まった。山田くんの頬の赤みがうっすら消え始めている。
「おい」
「え?」
唐突に山田くんが言った。
「さっきのアレって…」
「アレ?」
「だから「よろしく」だよ」
「あぁ」
「その、よろしくって…
こっ告白OKってことでいいのかよ…」
収まったと思った頬の赤みが、また浮き上がる。山田くんの目はウロウロと下をさまよっていた。
「えっと…うんと…さ
すぐにOKという意味ではなく「えっ」」
下をさまよわせていた目がこちらを向ける。
その目はどこか潤み始めている。
「!!
やっ!えっと!
別に駄目ってわけじゃなくてさっ」
俺は慌てて言う。
山田くんは黙って俺を見つめる。
「そのさ俺達…山田くんは違うかもしれないけどさ、俺は山田くんの事殆ど知らないわけじゃん」
俺は手を宙で回した後、自分の首に当てた。
「だからさ…すぐにOKは出せないっていうか、なんというかさ……」
俺の言葉を黙ったまま聞いている山田くん。
その顔はなんとも言い難い顔で、さっきまでの嬉しそうな顔とは全く異なったもので。
俺はなんとなく、胸が痛むような気がした。
「…おい」
「えっ」
「それってよ…」
押し黙っていた山田くんがゆっくりと口を開いた。それは一つ一つ、慎重に言葉を考えているようにも思えた。
「別に、俺がダメってことじゃないん…だよな」
山田くんの瞳には俺が写っている。
山田くんはじっと俺を見つめたまま。
「あぁ、うん、ダメって事ではないかな」
山田くんは瞬きをゆっくりした。
ゆっくりと時間が流れるような気がした。
「ならいい」
「へっ?」
「なら、今はそれでいい
俺が…
男の俺が嫌なわけじゃないんだろ?」
「あっ……」
そうだ。山田くんは男で。俺も男で。
なのに今は山田くん自身をみている。
男 という事であぐねいた訳じゃない。
リーーン
昼休みの終わる音がした。
「あ、授業…」
「あぁ」
山田くんはくるりと後ろを向いた。
「授業…出ろよ?今なら間に合うだろ」
「あ?うんまぁ、そうだね」
俺は出入り口へと歩き出す。
ふと、立ち止まって山田くんを見た。
「えっと…山田くんは行かないの?」
「あ?…あぁ、俺はいい」
山田くんは空を見上げながら言った。
「勉強、好きじゃねぇ」
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