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08にしおりをはさみました!
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08
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冴が恋人になってから1ヶ月が過ぎた。
毎日休み時間に俺の教室に冴が来るもんだから、尚とはあまり話せていない。
せめてお昼ご飯だけでもって思ったけど、冴が来てそれも無理だった。
尚の教室の前を通る度、俺は尚に手を振っていた。尚も、それに応えてくれていた。
けど、恋人が出来る前よりも、俺と尚の距離は確実に開いている。
おはようとか、こんにちはとか、殆ど挨拶の言葉しか交わしていない。
流の言う通り、前みたいな友達には戻れなかった。
沢山話せない事が、
少しでも、どんな形でも、尚に触れられない事がこんなに辛いなんて、
恋人が出来たからって、この気持ちが消える事はないとあの時気付いたはずなのに。
二人のキスを見た時に、解ったはずなのに…。
俺は、
「蓮先輩?」
「ごめん、疲れてるみたい」
好きでもない冴を何度も抱こうとした。
いや、抱けなかったと言った方が正しいか。
俺の息子の方が素直なのかもしれない。
全く、ピクリとも反応しないんだ。
「蓮先輩そればっか。浮気しちゃいますよ?」
「それは…嫌かな」
恋人ならこう言うだろうと、考えて言っている時点で俺達は擬似恋人なんだろう。
冴も、俺を好きではない。
後から知ったけど、冴は直ぐに誰とでもヤル軽い子らしい。
浮気しちゃうとか言うけど、冴はいつも誰かとヤっている。昨日、空き教室でまた男とヤっている所を見てしまった。
1ヶ月の間に10回くらいその行為を見てしまっている。
だからと言って、何も言うつもりはない。
俺も似た様なものだから。
「なら、明日こそちゃんとして下さいね?」
「うん、ニンニク食べとくよ」
制服に腕を通し、ネクタイは面倒臭いから胸ポケットに入れて冴の部屋を出た。
「あー、蓮じゃん」
偶々だろうけど、俺の前を尚が通った。ここは1年の寮の廊下。何をしていたんだろう。
「どうも」
最近、尚の笑った顔見ていないな。
真顔で俺の名前を呼ぶ尚が、凄く遠くに感じた。
「何してーって、あの子の部屋か。お熱い事で」
手をパタパタと扇いで、熱い熱いと繰り返す尚に苛々した。
熱くなんかない。俺と冴は最初から恋人なんかじゃない。恋人らしく振舞っていただけに過ぎない。
それもこれも、全部ーー。
「ーーーっ!?」
気付いたら、尚を壁に押し付けていた。
「痛いな。…離せよ」
綺麗な目が鋭く細められ、俺を睨み付ける。
今まで、こんな目で俺を見た事はなかった。
「…ごめん」
尚を押さえていた手を離し、その場から逃げる様に部屋まで走って行った。
「最低だ…」
俺は、尚の所為にしようとした。
俺が、俺自身が、冴に告白して付き合う事になったのに。
今のこの状況を、尚の所為にしようとしたんだ。
俺が走って逃げた後、壁に寄り掛かって泣いていた尚の事など、知る由もなかった。
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