アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
僕がゲイだと二人の友人にばれたのは高校生の時。
その内の一人に告白されたのはそれから半年後。
今でももう一人の友人は変わらず友人のままで、恋人は恋人のままだ。
「で?いつまで続けるつもりなんだ?」
呆れた顔で煙草を咥えているのは僕と恋人の高校生の頃からの友人、隆哉だ。
居酒屋のメニューに夢中だった僕はそっとそれを置いた。
「いつまでと言われても…」
僕は恋人との関係を終わらせる理由をずっと探している。それなのに理由が見つからない、そう言うと溜め息と一緒に煙草の煙を吐き出した。
「お前は、彼奴の事が好きなんだろう」
「え?好きなの?」
そうなのかなと首を傾げる僕に隆哉はまた溜め息を吐く。
「一回、しっかりと考えろ。好きなのか嫌いなのか。それでもう…、どっちかに決めろ」
「そんな面倒臭そうに言わなくても…」
隆哉はビールジョッキを煽る。
「そもそも俺には関係ない事だからな」
この話は終わりだと一気に飲み食いを始める隆哉は、少し他の人とずれているらしい僕の手を引きいつも傍にいてくれた。見た目が良くてかなりモテるのに無愛想で口も悪い、けれど優しい。隆哉と付き合えば良かったな、そう冗談交じりで言うと心底嫌そうな顔で無視されてしまったけれど。
恋人を今も好きか好きじゃないかと言われると、好きではないと思う。随分長い間一緒にいて、胸がときめく事も、触れたいと思う事も、いつも傍にいたいと思う事も、もう無い。それなのにだらだらとこの曖昧な関係を続けている。だからと言って嫌いなのかと言われるとそうは思わない。自分でも面倒臭い性格だなと思う。苛々もする。でも恋人が僕を嫌いだと言うのならそれを受け入れる。笑顔で別れの言葉を言うつもりだ。
「いっそ嫌いだって言ってくれればいいのにな」
小さく呟きながら僕もビールを一口飲んだ。
「…お帰り」
「…た、だいま」
同棲し始めてもう何年目だろう。今日は珍しくいつも帰りの遅い恋人が家に居る。
「どうしたの?今日も残業かと思っていたから」
恋人である大谷君の帰りが遅い理由は残業や接待、らしい。不審な点はあるけれど問い詰める事はしない。今日は隆哉と飲みに行くと一応メールはしておいた。でも返事はなかったからいつも通りだと思っていた。
「居たら、悪いのかよ…」
僕は慌てて首を振る。
「飯、食ってないんだけど」
「分かった!何か作るね」
急いでスーツの上着を脱ぎ、冷蔵庫を開け使えそうな材料を片っ端から取り出し抱えて行く。
「…手伝う」
横からすっと手が伸びて、大谷君は僕が抱えている物を取ってはテーブルへ置いて行く。
「…ありがとう」
こんな事をしてくれたのはいつ振りだろう。一緒にキッチンに立つなんて遥か昔の事過ぎて覚えてもいない。そんな事を考えていると大谷君はぼうっとする僕をじっと見ていた。
「ごめん!考え事をしていて…」
「何を考えていたんだ?」
久しぶりだなと思って、そう言った時自分が笑っている事に気付いた。驚く僕に大谷君も一緒になって驚いている。
「お前の笑った顔、久しぶりに見た」
そう言う大谷君も笑っているのだけれど、言うと機嫌を損ねそうな気がしてそうかなと気付いていないふりをした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 10