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知るかにしおりをはさみました!
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知るか
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俺が半ば自棄になってそんなことを呟くと、先ほどまでの穏やかさが嘘の様に三番が布団を引っぺがし、力ずくで俺の身体を仰向けにして口に手を突っ込んだ。
「ふぅ、まだ噛んではいないようですね」
俺は無言でにらみつける。
「お二人を良い方向に変えられる可能性のあるイチ様に居なくなって頂いては困るので、それに準ずる行為は全力で阻止させていただきます。
少々寝苦しいかもしれませんが、もとはイチ様の行動が原因ですのでご辛抱ください」
三番は早口でそう言うと、慣れた手つきで俺の口に猿ぐつわを噛ませた。
特殊な仕様になっているようで、外そうとしても全く外れなかった。
「その口枷は私以外には絶対に外せませんので諦めてください」
諦めてください、か。
その言葉には従った方が良いことを、俺は身をもって経験していた。
「・・・結構。それではお休みなさいませ」
三番は俺に向かって一礼すると、そのまま部屋を出て行った。
枕に頭を埋めて横を向くと、開いた口から自然とよだれが垂れる。
きったねぇなぁと思って上を向いたら、目じりから何かが伝った。
手で拭ってみると濡れていて、涙が出ていることに気付く。
気付いた後は次から次へと零れていき、こめかみに一筋の流れを作った。
だがどれだけ泣いても呼吸が乱れることは無く、ただ静かに枕が湿っていくのを感じていた。
明日を、その先を、考える事がこれほど苦痛だったことは無い。
どれだけしんどいバイトが、トラブルが、待っていたとしてもそこには必ず自由があった。
自分で選択し、決断する自由があった。
だが今は無い。
痛みを与えることも、苦しめることも、そして死ぬことさえも自分以外の人間が自分の全権を握っているのだ。
自分の無力さなど感じない。
感じるのは途方の無い痛みだけ。
しかしその痛みすらも直に操作されるのだろう。
ペットに躾をするように。俺を縛る枷として。
・・・いや、もう縛られているのかもしれない。
正直冷静になってみると、何故あそこまで三番と会話を交わしたのか分からない。
あいつらの性癖も、事情も、俺には何一つ関係ない。
それこそ「知るか」である。
寧ろ聞くべきは何故連れてこられたのか。何故俺だったのか。
だがそれは聞かなかった。
多分、抑圧された状態から解放されて、少しでも自分の意思で行動がしたかったからだと思う。
と言っても繋がれた状態ではできることは限られている。
だから、出来る限り話をしたかったのだ。
他人に強制されるのではなく、自分の意思で出来ることがその時は会話しかなかった。
だから核心に触れようとせず、考えてみれば意味の無い話を三番に振った。
長ったらしい三番の話も気が続く限り聞いた。
その自分の必死さがおかしく、またこんな状況でそんな事を冷静に分析している自分が気持ち悪く、俺は泣きながら笑い、気が付くと眠っていた。
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