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おでかけ 8 side琥珀にしおりをはさみました!
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おでかけ 8 side琥珀
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翡翠の住んで居たマンションに荷物を取りに向った。
ドアを開けた後、全ての記憶が蘇ったのだろう、床に崩れ落ちた翡翠は自傷行為に近い、髪や顔、首を、嗚咽と共に血が出るほど掻き毟った。
音宮真音を連れてきた時の対処法、自傷行為の根源を押さえ、堪えているようであれば許可を出す。ゆっくり呼吸をさせる。
見様見真似で俺と茜は翡翠の腕をやんわりと押さえ、深呼吸を促す。嗚咽を堪えるように喉を膨らませるのは、吐き気を堪えているらしい。服を汚すことを気にしているのか、こんな時まで。
「服は気にするな。吐いていい」
鼻を突く刺激臭と共に、服と床に吐瀉物を落とす翡翠。薄い肩は震え、嗚咽は止まらない。
茜はタオルを取りに洗面台に向う間、俺は背中をさすり続けた。
ぼとぼとと落ちる吐瀉物と胃液に混じり、涙までもが床に落ちる。
以前、音宮真音に言われた、この状態の翡翠は脆いと事実。
腕を押さえていなければ、自分で首を絞めるだろうと表情を変えることなく言った。身体を押さえていなければどうなるか分からないと。飛び降りるか、凶器になり得るものを掴み自殺するか、無ければ頭を強く打ち付け続けるかもしれないと。
「それ以上吐くな。胃も喉も痛める」
ひらきっぱなしだった口が、不意に閉じる。
「ッやめろ!!」
閉じた口をこじ開け、指を根元までねじ込んだ。茜の慌てた足音が止まり、何事かと問い詰めてくる。
「こいつ、舌噛むつもりだったらしい」
「そんな……」
あと一息分でも遅かったら、翡翠は間違いなく舌を噛み切っていた。
ごぷ、と再び翡翠が嘔吐く。指を汚し、吐き出しきったのか、虚ろな瞳のまま、俺達を見上げている。
「どうして……?」
かろうじて零れた言葉は、それだった。
「どうしてじゃない。目の前で死なれてみろ」
説教なんて柄じゃ無い。これ以上話せば説教どころか責めるだけだ。そうしたらまたパニックになりかねない。
吐瀉物でどろどろに汚れた翡翠を茜に任せ、俺と部下で荷物を纏める事にした。
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