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90にしおりをはさみました!
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一次会はそろそろ終わりそうだった。いつもならこのまま帰るところだが、今日はバイト終わりの荒太を迎えに行くから、もう一軒行かないかと誘ってくれた先輩の話に乗る。
今日は11時上がりらしいから、二軒目を出る頃にはちょうど良いだろう。
先程クズ発言をかましていたフミ先輩と、その幼馴染の希子先輩と3人で、希子先輩オススメのバーに向かう。
「最近発見したんだけどさー、超イイ感じなの!隠れ家ぽくて、バーテンさんもイケメンだったし!」
イケメンがいるのは俺にとって何の得でもないが、静かなのは嬉しい。さっきのテンションで疲れたし。
大通りから枝別れした細いみちに入り、少し進んだところにある階段を降りる。そこから何度か曲がりながら歩くと、大きな木製のドアに辿り着いた。
階段を降りてから100mくらいなのだろうけど、曲がり角がおおくてヤケに遠くまで来た感覚に陥る。
「ね、ここに来るの楽しくない?」
「めっちゃ楽しい!秘密基地ぽい!」
興奮しているフミ先輩を笑いながら、そのドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
落ち着いた声とは裏腹な、色香たっぷりのお兄さんが出迎えてくれる。なるほど、これは先輩が騒ぐわけだ。
二十代後半くらいか?少し長めの黒髪は緩いパーマがかかっていて、毛先を少し遊ばせている。垂れ気味な目が、妖しい雰囲気の出どころかもしれない。その下には泣きぼくろもあって、より一層その匂いを強くしている。
「灰里さん!また来ちゃいました〜」
「待ってたよ希子ちゃん。それにしても、イイ男侍らせてんね〜」
先輩と挨拶を交わすと、ニコ、と俺らの方にも微笑みかけてきた。
「初めまして、マスターの絢瀬灰里です」
どうも、と軽く挨拶を返してカウンターに座る。「何飲む?」と聞かれたので、さっぱりしたのをオススメでお願いした。
「で、どっちが彼氏?」
「やだ、どっちも違いますよー!フミはあり得ないし、遙は愛しの彼女ちゃんがいるらしいし?」
「お前な、あり得ないってなんだよ失礼な」
「あんな最低発言する人なんかお断りです〜」
手際よくドリンクを作っている灰里さんは、「仲がいいんだね」と笑った。
そこからたわいも無い話を続けていると、フミ先輩に電話がかかってきた。ちょっとごめん、と言って席を外す。
「で?実際本当にいんの、彼女。美優とかいったっけ、あの女振り払うために適当に嘘ついたんじゃない?」
この女、鋭いな。いや、まあ実際に恋人はいるんだけど。
「ハハ、さすが女の人ですね。本当は言うつもりなかったんですけど、あまりにしつこいから」
「…ありゃ?てことは本当に付き合ってんだ」
「はい。いますよ、恋人」
フミさんがいなくなってから聞いて来るあたり、この人なかなか気が回るんだな。フミ先輩、美優にならなんでも話しそうだし。
「あたしにくらい教えてもいいんじゃない?相談乗ってあげるわよ〜」
確かに、希子先輩はかなり信頼度が高い。何かと力になってもらえそうだし、そもそも大勢の前でなければ隠すことでもないかと思い、質問に答えた。
「歳は?」
「同じです」
「あら。てっきり年上派かと思ってた。社会人?」
「いえ、同じ大学ですよ」
「マジ!!そりゃ隠さないと、バレたらあんたのファンが何かやらかしそうだもんね」
「あー…ハハハ」
リアルに想像できた。美優あたりが陰湿な嫌がらせ仕掛けてそうだな。
「モテる男は大変ね〜。灰里さんも大変でしょ?」
「そうでもないよ。俺は彼女作らないし」
「え、彼女いないんですか!!」
聞き役に回っていた灰里さんに彼女がいないことがわかると、そりゃもう希子先輩は大興奮。俺のことはそっちのけで話を聞きまくっている。
「ごっめん!お待たせ〜!」
電話にしちゃ遅いなと思っていたフミ先輩がようやく戻ってきた。…と思ったら余計な奴を連れていた。
「さっきぶりですっ!」
「…あんたね」
事情を分かってくれている希子先輩もさすがにご立腹らしい。フミ先輩の頭をぶっ叩いていた。
「美優、ここに来ちゃだめでしたか…?」
カオスな雰囲気を感じ取ったらしい灰里さんが、ニッコリと微笑んだ。
「そんなことないよ、いらっしゃい」
一時はどうなるかと思ったが、灰里さんがフォローしてくれたおかげで一応みんな席に着いた。
時刻を見ると10時。もういっそのこと帰ってしまいたいが、荒太に一刻も早く会いたいのでそれもできない。
どうしようかと思っていると、奥から誰かが出て来た。
「灰里さん、ごちそうさまです」
……え?この声って、
「…え…?ヨウ…?!」
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