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今日も綺麗に整えられた髪に穏やかな目。
いつもと……昨日と変わらないその姿。
違うのは消して俺に触れようとしないこと。
心配したと言いながら…側に寄りながら、それでも僅かにとってある距離。
そしてもう1つ。
隠そうとしても隠せていない目の下のクマ。
いつもは無いそれが胸を締め付ける。
全てじゃなくても、俺が負担になっているのは確か。
俺はこの人の触れてほしくない場所に土足で踏み込んでしまったんだ。
まだ駄目だったんだ。
いや、初めから俺じゃ駄目なのかもしれない。
「ねぇ聞いてる?そんなに苦しいの??」
苦しい?これが苦しいって気持ちなんだと知る。
こうやって心配してくれるあんたを傷つけた事が。
俺ならわかってやれる、だなんて思い上がってた事が。
そして何もできなかった事が何より苦しく辛い。
「お水でも飲む?」
それなのにあんたは優しい。誰にでも優しい。
こんな俺にすら優しくする。
優しく……“する”
でも俺が欲しいのはそんな優しさじゃない。
「もう平気っすよ」
どれだけ俺が必死かなんて、あんたにはわからない。
「ならいいんだけど……」
少し安心したのか、桃さんはやっと笑ってくれる。
でも見たいのはそんな笑顔じゃない。
意識して出された笑顔なんていらない。
「唇……痛かったわよね、ごめんなさい」
「別に平気」
引っ掻き回すだけしか出来なかった俺の心配までしてくれる。それなら俺には何が出来るんだろうか。
伝えなきゃいけないことを言えない卑怯な自分。
それを言ってしまえば全てが終わる。
自分のエゴで隠していい………わけないよな。
ずっと。
ずっと不思議だった。
誰かのために何かを我慢すること。
誰かのために自分を押し殺すこと。
『為』は『所為』と同じだと思っていた。
でも違う事を知った。
俺は桃さんの『為』に変わりたかった。
桃さんの『所為』ではなく桃さんの『為』に。
守ってやれる男に、包んでやれる男に。
安心を与えてやれる男になりたかった。
高校生が何言ってんだって思われるかもしれない…けれど、俺なりに真剣だった。
過程はどうであれ、最後が上手くいけばいいと思っていたんだ。
それが間違っていたから、俺はあんたを傷つけた。
もう大人にならないといけない。
いつまでもガキっぽく足掻いてはいけない。
そして今がそのタイミングなんだろう。
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