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狼狽
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「っ…く、車の中も、同じでしょう?」
「いえ。同じではありません。先ほど貴女が仰ったんでしょう?
部外者の出入りを禁じれば良いと。
この車は僕と夜見専用ですから、後は運転手しか乗りません」
「なっ、なら…その運転手が何かしたら、どうなんですかっ?」
「それもまた、あり得ませんね。まぁ、理論的には可能ではありますけど…」
「ほら、ほらどうです?完璧では無いじゃないですか」
ふと、夜見の目を見ると物欲しそうに潤んでいて、今にもくぅんと泣き出しそうだった。
良い感じだ。もう少し焦らそう。
「…良いでしょう。ですが、ご気分を害されても悪く思わないでくださいね」
「どういう意味です?」
コンコン
運転席とこちらを隔てる窓をノックすると、音も無く下にスライドした。
「何でしょう?」
「お前、前の運転手どうした?」
「殺しました」
「どこで?どうやって?」
「運転席で居眠りをしていたので、鍵穴から排気ガスを流し込んで中毒死させました」
「ん、もういいよ」
「はい」
音も無く窓が上がるのを確認して、顔を引き攣らせた西園寺に向き直る。
「人殺してまで盗聴器付けますか?音声が取れたとしても大抵は下らない事なのに。
あ、ちなみにうちの運転手は死ぬまでが任期ですから、待つだけ無駄です」
「ぁ、こ、ころ、した?…え?…死ぬ、殺す?…え、あ、え?」
…まさかここまでとはね、流石の僕でも予想外だな。
「君さ、もしかして何も知らなかったの?親から何って言われてたの?」
この狼狽え様ならもういいかと、話し方を元に戻した。
「え?あ、え、ぇと、ふ、普通に、貿易商の、方、で…あれ?え、え?」
……貿易商…何か、変だな。
「本当に?他には何か言って無かった?頑張って来なさいとか、じっくり話しなさいとか」
「じ、じっくり…あ、あと、えと、一個一個丁寧に、話しなさいって」
丁寧に…やっぱり時間稼ぎかな?となると…
「ねぇ、志田って知ってる?」
「し、志田?は、お、叔父さん、です。今回の話も、取り持ってくれて…あの」
「ん?」
「ぉ、お願いですから、ころ、ころ、殺さない、で、くだ、さい」
「君を?良いよ」
「へ?…あ、あ、ぁりがとうございます。ありがとうございます!」
多分放って置いても死にたくなるだろうけどね。
「夜見」
「まだ?」
「まーだ。電話とって」
「ふん」
「そんなに意地悪されたいの?」
「んふふ」
「そっか。じゃあ後で爪剥いであげるね」
ビクッ、と、夜見の肩が跳ねた。
「ぁ、ぁれやだ。痛いだけだもん」
「もう遅い」
夜見を通り越して電話を強引に取ろうとしたら、その手にしがみつかれた。
「ご、めん、なさい。ごめんなさい。許して。カイ、カイ、許して、お願い」
「だーめ」
「おね、がいだがらっ、あれ、やなの!全然ぎぼぢよぐない!…ガイ、ぇぐ、お願い」
泣きそうだった子犬が、もうぎゃんぎゃんと泣き喚く。
「ふふっ、良い顔。しょうがないなぁ。じゃあ電話とって」
「ふぁ、やった。ん、はい電話」
「ありがとね…」
ブツ
ワンコールで呼び出し音が止まった。流石だな。
『尋問室に居ます』
「黒だったから好きにしていいよ。最後は殺してね」
『動けない状態で生かしておくのは駄目でしょうか?』
「というと?」
『最近医療班の方から血液が足りないと再三要望が有りましたので、血液生成バックにしたらいいのではと』
「へぇ、良いねそれ。そんな事出来るんだ」
『多少費用は掛かりますが、それでも売買されている血液を法外な価格で買うよりは相当抑えられると思います』
「優秀」
『恐れ入ります』
ブツ
「誰とお話ししたの?」
「伊集院だよ」
やっぱり嫌いなんだな、表情を取り繕うつもりは毛頭無い様だ。
「ぁ、ぁの、ぃぃ、ですか?」
か細い声にそちらを向くと、何故か挙手をしていた。
「はい。西園寺さん」
何となくのってみる。指を指すと短い悲鳴を上げられた。
「…ぇ、ぇと、志田の、叔父さんって、今、どこですか?」
そう聞く瞳は赤く充血して、唇から細く赤い一線が伝った。
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