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Encounter_9
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寝室が静かになったのを確認して、ぱたんと扉を閉じる。
リビングに戻ると、キッチンの方には雪が差し出した1万円札が何枚も落ちていて、俺はそれを皺を伸ばしながら拾い上げた。
神様ってのは何でこう、傷口を抉って塩を塗り込んでくるのか。
手首の縛られた痕に本人のあの言葉。
身売りしてると気付いた時は、もう頭が真っ白で。つい本気で雪に平手打ちをかましてしまった。
でも――ダメなんだ、売春だけは。
俺の最も嫌う犯罪でもある。
この皺くちゃの紙幣がおっさん達の汚い欲で塗れてると気付いた今、すぐにでも捨ててやりたい気分に駆られるけど…
これはこれで、ちゃんと雪の稼いだものだ。
やり方は犯罪だけど、俺がどうこうしていい物ではない。
とにかくくしゃくしゃの紙幣は棚の奥に突っ込んで、自分の財布から新しいピン札を数枚取り出した。
雪がどこへ行っても、何も困らないように。
今度は身売りなんかしなくても、いいように。
「…俺も、寝るか……」
時計を見れれば、もう12時を過ぎていた。
連日働き抜いた身体は悲鳴を上げていて、ソファに身体を沈めると直ぐに意識は遠のいていく。
その波に身を任せて、俺は目を閉じながら今日の事に思いを巡らせていた。
本当に今日は――色々あったなぁ……
子猫を拾ったと思ったら、実は猫耳尻尾付きの少年で。
施設から逃げ出してきたという、ファンタジーの様な展開が進んで。
"雪"という名前を付けて、おにぎりを食べて、それから2人で、大声上げてわんわん泣いて――
頭が痛くなるくらいよく分からない状況に巻き込まれていて、正直関わっていいのか分からない大事な気がするが――やっぱりあの傷を見て、放って置けそうには無い。
とにかく明日は、雪の施設の事調べてみようか。
いつその考えに至ったのか、もう覚えてなくて。
俺はいつの間にか、眠りに落ちていた。
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