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雪の日の午後
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<12、雪の日の午後>
まったく音のない世界にいぶかしんで、ゆっくりと瞼を上げる。昨日のだるさが嘘のように身体が軽い。起き上がり、きんと底冷えするような空気に身を震わせる。
ふと、身にまとっている衣服が昨日のだらしないものでなくちゃんとパジャマを着ていることに驚いた。昨日俺着替えたっけ。昨日はなんか衝撃的なシーンを見て、体調が悪くなって。そのまま寝てしまって……。
『いつき、』
そう、そしてやらしい夢を見たんだ。何故か息を荒くしながら俺を呼ぶ声がする。女の人のような、男のような、艶めかしい声。なんだかすごく気持ちよくてふわふわとしていた。その声は情欲がこもった声でごめん、ごめんと謝っていたような。熱い吐息と吐き出される俺の名前は後悔も込められていた気がする。
「……俺、溜まってんのかな」
夢にしたって趣味が悪すぎる。ひでえ夢。思い出しながらまた起ちあがりそうな自分の分身を見つめやりきれない思いでいっぱいになる。元気になったら早速抜こうと思いながら立ち上がった。どうせパジャマは孝太郎が変えてくれたんだろう。
時計を見ると二時を指していて、時間を意識すると一気にお腹がすいてきた。なんか食べよう、今の時間帯じゃ誰もいないから適当に何かつまめばいい。
カーテンをそっと開くと外は雪が降っていた。雪独特の静謐な雰囲気に思わず溜息が漏れた。音のない真っ白な世界。綺麗だと素直に思う。そのままベランダに素足で出て久しぶりの雪と戯れようとすると、自室のドアが開かれた。
「……え? 孝太郎?」
「樹、お前起きてたのか。ていうか何しようとしてる」
ドアの向こうから現れたのは孝太郎だった。雪と遊ぼうかとーなんてへらりと笑うと肩を掴まれて部屋に戻されてしまう。
「風邪っぴきが何考えてんだ。素足のまんまだし」
「つかお前こそ学校は?」
今日は確か六限まであったはず。記憶を探りながら時間割を思い出していると、孝太郎はなんでもないことのように早退した、と言った。言われてみれば制服姿で、さっき帰ってきたのがわかるくらい体が冷たかった。
「午後選択と体育だったからな。出ても出なくても支障はないと思った」
「もしかして俺のため?」
不安そうに聞き返す俺を孝太郎は曖昧に笑った。それが肯定だとわかって申し訳なくなる。でも、一人で少し寂しかったこともあって、孝太郎がここにいてくれて嬉しい気持ちのほうが強かった。
孝太郎がそっと俺の顔を両手で挟み、熱を確かめるように優しく撫でる。
「一人で心細かったろ。ごめんな」
『樹、ごめん』
何故か夢の中の人物と孝太郎が重なってかっと顔が熱くなる。やばい、顔見れない。孝太郎ごめん、俺お前で妄想しちゃったよ。夢の中の人物と、孝太郎は違うはずだ。違う、よな?
「樹?」
「あっ……や、なんでもないなんでもない! お腹すいたなと思って!」
「うん。そうだろうとおもっておかゆ作ってある。部屋に持ってこようか」
「いや、いいよ。リビング行く」
パジャマだけでは寒いのでそこらへんのパーカーを羽織る。雪はしんしんと降り続き、止む気配はないようだった。
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