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5.好きな人とのキス-1
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撮影は順調に進んでいた。でも、その順調な撮影がユキジを段々と苦しめる。
「祝とキスか……」
前なら嬉しかったかもしれないけれど、今のユキジは嬉しさなんてなかった。
プライベートと仕事を切り離す事ができるほど、大人な人間ならこんな気持ちにはならないはずだけれど、初めての映画で演技で、そのキスをする相手が好きな人。しかも、恋人がいて、その恋人の前でしなければならない。
なんて最悪なシチュエーションだろうか。
「どうかしました?」
「え……。あっ、なんでもないです」
撮影待機中。仕事モードの壱成がユキジに敬語で話し掛けて来た。
壱成は流石と言って良いほど、堂々としていた。
慣れている。こういった事に。
「ああ。アイツとのキス?」
「!」
ズバリ当てて来た壱成の言葉に、驚きを見せるユキジ。なぜ分かったと顔で言う。
「あんたがソワソワしてるから……普通に分かるよ」
「そ、そんなに落ち着きない?」
「ないですね」
「そ、そうか……」
こんな意識してますって顔を祝に見せたら恥ずかしいのはこっちだ。あと、秋幸にも悪い。
「好きな人とキスできるんだから、喜べばいいのに」
「そ、そんなの僕には……」
できるわけがない。そんな風に思えるほど楽観的でもない。
「このチャンス逃したら次はないと思うけど」
「そ、そうだけど……」
「キスしたくないの?」
「え……?」
「アイツと」
そう言われ、ユキジは直ぐにしたいと言えなかった。壱成とのキスが浮かぶからだ。
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