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奏なんか嫌い
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あの一件から数日後、俺はいつものように中庭の噴水の近くでぼんやりしていた
出掛けたい時は声を掛けろと言われても、凱は忙しそうだし楓はいないし奏には頼めないから結局どこにも行けないままだった
「はぁ・・・・・・・」
奏は元気かな?
突然消えたから今頃ものすごく心配してるかも知れないね
空を見ても、現実世界とは繋がっていない空
昼間なのに星が出ている不思議な空
一体、いつになったら元の世界に戻れるんだろう・・・・・・・ホントにずっとこのままだったらどうしよう
「空」
「・・・・・・・奏」
「もうすぐ嵐になるから部屋に戻れ」
「嵐?だって星が」
「いいから」
「・・・・・・・・・・・わかった」
星が出てるのに嵐って意味がわからないよ
もっとわからないのは奏だよ
何だかすごく冷たいし、俺から声もかけにくい
「どうしてそんな顔をするんだ」
「これが普通だし」
「お前、俺が怖いのか?」
怖い・・・・・・
その言葉を聞いて考えてしまった
怖くは無いけど、やっぱり怖いのかな
よくわからない
「空様こちらでしたか、もうすぐ産まれますよ」
「えっ、ホント?」
「はい」
声を掛けてくれたのは、馬の世話をしているベリーさんだった
退屈している俺に馬を見せてくれたり、手伝いをさせてくれたりしていつの間にか仲良くなった
「今行くよ」
「空」
「何?」
「俺の言葉が理解出来なかったのか?」
「えっ?」
「部屋に戻れ」
「でも」
風は穏やかだし、嵐なんてホントに来るの?
「馬を見たらすぐ戻るよ」
「待て!」
何?どうして腕を掴まれてるの?
「痛いよ」
「俺の言う事が聞けないのか」
「奏・・・・・・・」
「俺が戻れと言ったら戻ればいいんだ」
「何それ・・・・・意味がわからない!」
「空」
「俺は使用人なの?使用人として置いてくれているのなら仕事をするから仕事を頂戴!」
「そうじゃない」
「じゃ、どうして命令ばかりするの?それに従えばいいの?」
「命令ではない」
「命令じゃないなら俺の好きにするから」
「・・・・・・・・・・・駄目だ」
「何それ・・・・・意味がわからない・・・・奏なんか嫌いだ!」
「空!」
意味がわからないよ
この世界の奏は理解出来ない
俺をどうしたいのかも分からない
そのまま牧場に向かって走り出した
「はぁ・・・・・・」
「今のは奏が悪いね」
「楓」
「ホント、好きすぎてそんな話し方しか出来ないなんて情けないね」
「黙れ」
「普通に会話すれば空だって怒らないのに」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ああ、普通がわからないのなら教えましょうか屈折王子」
「黙れと言っている」
「空が心配だからってどうして言えないのかな」
「お前・・・・・楽しんでるだろう?」
「まぁね」
「お前の方こそ屈折しすぎだろ」
「さぁ」
「俺だっていろいろ考えたさ・・・・・空に優しくする事は簡単だが、もしそれで空が心を開いてくれたら嬉しいけどどうしようってね」
「消えるのが怖い?」
「ああ、怖いよ・・・・・今だって毎日心配でどうしようもない」
「どう言う原因で空がここにやって来たのかはわからないけど、奏にしては珍しく奪おうとはしないんだ」
「奪いたいさ・・・・でも、空が悲しむだろ」
「へぇ」
「もういいだろ・・・・・嵐が来るから空を頼んだぞ」
「御意」
くそっ!
どうしようもない気持ちをどこにぶつければいいんだ
空の顔を見る度に、心が重くなる
空の心の中にいる奴は俺ではない
どんなに頑張っても、空は俺を見てはくれない
だったら嫌われたほうがいいだなんて・・・・・・考えたのはいいけれど
「どうしたらいいんだ」
その方法も間違っているような気がして・・・・・・
揺れる星を見つめながら溜息をついた
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