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風紀委員室
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「……新入隊員脱隊者なし、器物破損なし、制裁行動も特にありません。」
「次」
「副会長親衛隊です…。新入隊員3名脱隊なし…、うち2名いじめによる制裁行動により風紀委員の方より厳重注意を受けました……。器物破損はありません…」
「後で残れ。次」
「生徒会長親衛隊。新入隊員5人脱隊なし。制裁行為、器物破損共になし。」
監査では風紀副委員長が場を取り仕切る。前年度の副委員長は語り癖があり、
全体への注意やら隊ひとつひとつに対してのコメントやら色々発言なさっていたようで前隊長がよく「話が長い」と愚痴をこぼしていた。今期副委員長は面倒臭がりなのか無口なのか余計なことは何ひとつ言わずサクサクと進めてくれるので非常に楽である。
風紀委員長はつまらなそうに頬杖をついて委員長席から薄目でほうけている。ただその鋭すぎる眼光に怯える者は多く、特に制裁などの良くない報告内容を発言する者は無口な副委員長と殺人鬼面の委員長を怯えるように交互に伺いつつオドオドと話すのが常である。
俺も、副委員長はまだしも委員長の怖さは前回実感済みなので目を合わさないし早く帰れと心で唱え続けている。
首藤くんが俺に丸投げした書類が非常に重く感じる。今渡さなければ確実に機会を逃すしひどい目にあわされるだろう。
大丈夫、渡す相手を副委員長にすればいいだろ。俺は決心を決め、なるべく平常心を装って一歩踏み出した。
「それと、会長様から副委員長様に預かりものがあります」
そう言って副委員長にファイルを押し付けた。
「……俺に?」
訝しげな視線をファイルに向けながらも副委員長は受け取ってくれた。
元の位置に戻った俺は心の中で完全に祝杯を挙げていた。これで委員長の怒りのやり場は副委員長に決定。思わずニヤけそうになる口角をキュッと引き締めた。
「監査は以上。残れと言った隊以外は解散」
そう言われた瞬間胸をなでおろす隊の代表者たちのぞろぞろと出入り口に向かう人の波に乗り、俺も椿とこぶしを軽くぶつけ合って喜んだ。
「杉原」
その声はボソッと呟かれたにも関わらず、ピリッとした緊張感を孕んで耳に届いた。
数人が俺の方をチラチラ見ながら厄介事の匂いを敏感に嗅ぎ取りスピードを速めてそそくさとその場から立ち去ろうとする。俺と椿は足が床に縫い付けられたかのようにその場に立ち尽くすしかなかった。
「あのファイルは、本当に代永に渡すものか?」
「……………」
「あ"?」
副委員長の名前、代永って言うんですか。とか、見捨てず一緒にいてくれる椿が愛おし過ぎることとか。そんなことが頭を巡りつつも背後からの威圧が徐々に俺の腰から肩にかけての体のラインを硬直させ重くした。
「…………いえ、正確には風紀に持って行けという指示を出されましたので副委員長特定ではないです。ただ、あの状況で1番手っ取り早い相手が副委員長でしたので」
「あぁ、言い訳は身を滅ぼすぞ。代永、それ中に何が入ってる」
「…え?あ、はぁ…」
内容を確認されると非常にまずいことになる。が、ここで逃げ出したところで委員長が他の委員に指示を出して即座に捉えられることは前回立証済み。とにかく今やるべきことは無関係な椿を逃すこと。そう判断した俺は椿の背に手を当て押しながら告げた。
「椿、先に帰ってて」
「…え、杉原様?」
「いいから。ね?」
そう言って笑う俺に椿は困惑した顔を見せた。このままだと納得しそうにないので「命令だよ」と付け加えるとようやく、渋々ながらその場をあとにした。
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