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ケージの中から逃げたのは
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誕生日はいつもキミが祝ってくれた。
朝の「おはよう」から夜の「おやすみ」までキミはずっとずっと傍にいた。
シャーペンを筆箱にしまうと今年の誕生日はひとりか、とそう思う。
ひとりには慣れているはずなのに
自分が望んだはずなのに
それなのに誕生日にひとりは嫌だと思ってしまう自分がいる。
鞄に全てをしまって学校を後にする。
いつも帰りに立ち寄るペットショップに今日も向かう。
かわいいうさぎさんは今でも誰にも買われないままそこにいてもぐもぐと口を動かして人参を食べる。
うさぎさんはボクみたい……
ケージの中で飼われて餌と寝床が与えられる。
父さんが単身赴任をはじめて、母さんの仕事が忙しくなってひとりでいることが多かった小学生時代。
偶然、同じクラスになったキミ。
遅刻を繰り返し、だらしない格好できたり、時には学校に来ないボクに世話をやき始めたキミ。
最初はめんどくさかった。
「もー!!そんなに言うならボクのめんどう全部見てよ!!」
そんな一言からだったと思う。
キミは何を思ったか本当にその言葉通りめんどうを見始めた。
朝迎えに来る、が起こしにくるになって、起こしにくる、が起こして朝ご飯を食べさせる、になって、朝ご飯を食べさせる、が着替えさせるになって……
気が付いたらキミが全部やってくれていた。
朝だけだったのも夜もになって
キミがいつも傍にいた。
あたりまえのように…
ボクはキミという名のケージに飼われていた。
ボクは脱走した。
ねぇ、うさぎさん??そこは幸せ??
手を伸ばしてうさぎさんに触れる。
もこもこの毛皮。柔らかい。
幸せに決まってるよね
だって、まだ飼い主はいないけど大事にされているんだもん。
どうしよう、わがままなボクは逃げ出したケージに戻りたいや。
いつまでこんな逃走を続けるつもりだろう。
うさぎさんは寂しいと死んでしまう、のに。
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