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夏休みに前に
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「来ちゃった....」
僕は学校が終わるとその足で、彼の家に向かった
今更だけど....本当に今更だけど
勇気をだして彼と話をしようと決めた
でも決めてから..悩んで悩んで悩みまくってこんなに遅くなってしまった
電話したわけじゃないし、いるかどうかわかんないし、ひょっとしてお母さんがいるかも
やっぱり今日じゃないほうが....でも!ここまで来たんだから!
でも迷惑かも...でも...
行ったり来たり思いが交差する
彼のアパートの前でうろうろしながら30分くらい
ええい!覚悟を決めろ!とばかりに階段をかけあがる
一番奥の角の部屋
ちょっとドアの前で人の気配を気にする
い...いるかな....
インターホンに指を当てるが勇気が出ない
押せ!
押せってば!
ピンポーーーーーーン
押しちゃったよ!!!!
あたふたしながらドアが開くのをまつ
.....
誰も出ない...
いないのかな
もう一度押してみる
インターホンがむなしく響くだけだった
「....なーんだぁ」
僕はがっかりしたような、ホッとしたような気持ちでその場を離れようとした
すると
「はい...」
少し遅れてドアが開いた
空いたドアから少し眠そうな顔をした彼が顔をのぞかせた
「あ!あれ?!いたの!?」
僕は油断していたせいで自分が訪ねてきたくせに意味不明な返答をする
「あれ...?歩くん...?」
彼はラフなTシャツにグレーのスウェット姿で、今まで寝ていたのか、髪に
軽く寝癖がついていた
見慣れない私服姿に、心が少し暖かくなる
「どうしたの...?」
まるで僕が訪ねてくるなんて思ってなかったように目を丸くして訪ねてくる彼の顔をみて、
ここに来る前に言おうと決めていた言葉たちがしぼんでいく
「え...えっと」
彼から目をそれして、口ごもる僕に彼は
「入れば?」
と家に招き入れてくれた
シンとした部屋
たった一か月会わなかっただけなのにまるで知らない人の部屋みたいに冷たい空気が流れている
「誰もいないの...?」
部屋を見渡して僕は聞いてみる
「うん、仕事」
この部屋で彼はやっぱり一人だった
「なんもないんだけど」
そう言いながら、トレーに麦茶を入れて持ってきてくれた
しまった...
何か持って来るべきだった
自分が何をしに来たのかと思ってしまう
言いたいことがいっぱいある
聞きたいことがいっぱいある
なのに彼の顔を見たら途端に何もかもどうでもよくなってしまう
彼の部屋の床に座りうつむきながら最初の一言が出てこない
どうしよう
そんな風に考えていたら
最初の一言は彼が発した
「話があるからきたんでしょ?」
そう言われて思わず顔を上げる
「違うの?」
ベットに座りながら僕を見下ろす
「そ...そうなんだけど」
彼は口元だけで笑って言った
「なに?」
なにって....
なにから話せばいいんだろう
考えがまとまらない
あれもこれもいっぱいあったはずなんだ
黙ってうつむく僕にしびれを切らして彼はいった
「話って別れ話?....それともあの話?」
彼は迷いもせず言ってくる
彼の目は僕の心の深いところを見据えている
僕がなんでここに来て何を言いたいのか....
「話してくれるの...?」
僕はおそるおそる聞いてみる
緊張しながら言う僕を見て、ふふっと笑いながら机に置かれた麦茶に手を伸ばす
グラスの氷がカランとなった
「君が聞きたいなら話してもいいよ?」
「ほ...ほんとうに?」
「今さら、嘘なんてつかないよ?歩くんには特にね」
そう言った彼の顔は、なんの感情もないように平然と前を見据えていた
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