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「じゃ、遊びますか」
と、廊下に出た桜月君は笑ってそういった。
遊ぶの意味が、未だにわからないんだけど…
「遊ぶって、何するんだよ」
それは二ノ宮くんも同じらしい。
「んー、さぁ?」
「さっきは止めちゃいましたからね。
話したいこと、あるんでしょ?特に委員長」
さっきまで僕が寝ていた部屋に戻ってきて、僕はベッド、二ノ宮君と桜月君は椅子に座って、向かい合った。
けれど、桜月君は話に入る気はないらしい。
はなし……
それは、さっきの、大原君絡みのことかな。
「….、鈴原。」
少しだけの沈黙の後、二ノ宮君は僕の名前を呼んだ、
「あの時、その…お前はやっていないのか?」
おずおずとそう聞いてきたのに、内容は単刀直入だった。
『していません』
「そう、か…」
俯いてしまった二ノ宮君。
『…同情、ですか?』
「は?」
『父さんと、母さんの事で可哀想だと思って、そういうこと言ってるんですか?』
同情で信じてもらうくらいなら、信じてもらわなくていい。
そんなの虚しすぎる。
「違う!あの時は…、本当にどうかしてた。
言い訳になってるのはわかってる。
けど、…けど、俺が、馬鹿だった…っ!」
体育祭の時だって、と言う。
「体育祭の時だって、お前の両親のこと知った時、頼って、欲しかっただけなんだ。
お前が俺は関係ないって言った時、兄貴には言ったのにって思った。
兄貴なら頼れるのかって。なんで俺じゃダメなんだって」
なんで、なんで君がそんな泣きそうな顔するの。
「それで、なんだか無性に腹が立って…」
『怖かったんだ』
「え?」
『知られて、拒絶されるか、腫れ物のように扱われるか。やっと、仲良くなれそうだったのにそれを崩してしまいそうで、怖かった。
けど、あの時は僕の言い方が悪かったんだ。
ごめんね。
それにね、自分勝手だけど…大原君の時のことだって、二ノ宮君僕のこと信じてくれるんじゃないかって勝手に思っててさ。
その前ひどいことしたの、僕なのに』
僕の方が最低だよ。ごめんね、と。
「あ、謝るのは俺の方だ。
お前は全然悪くないのに、今回だって…」
『ほら』
「?」
『やっぱり気にするでしょ?』
それが今回のことを指すのに気づき、ハッとする二ノ宮君。
僕は何がしたいのだろう。信じてもらいたいのか、許してもらいたいのか、拒絶したいのか。
『僕が悪かったのは、認める。
ごめん、ほんとごめん。
でも、君のはやっぱり同情も入ってる』
「ちが、う…」
『違わないよ。』
なぜこんなに胸が痛いのだろう。
二ノ宮君は一生懸命言ってくれてる。
あぁ、なんて僕は醜い…。
『無意識にね、きっとしてるんだよ』
「…なら」
と、突然グッと腕を引かれて、気づけば二ノ宮君の腕の中だった。
前に1度学園でされた事のあるそれと同じで、安堵がよぎったけれど、一瞬で恐怖に変わった。
「や、……ぁ、…」
二ノ宮君の体を押しもどそうと、肩を押すけれど、震える手じゃなんと効果も出ない。
「委員長っ!」
「チャンスをくれ」
「…、す、?」
「お前が俺を信じてくれるような、
お前がここなら泣いてもいいって思えるようになる、から、」
だから、
「そのチャンスをくれ」
もし、
「それでも駄目なら、俺は風紀委員をおりる」
「…なっ、!?」
「これが俺なりのケジメだ。
大事なやつ1人守れないで生徒を守れるわけもない」
ふ、と力が抜ける。
まだ、震えは止まらないけれど、
「ず、…るい、よっ。そ、な…言い、方」
風紀委員をおりるなんて、ただの脅しだ。
僕と違って二ノ宮くんは委員長でなければならないのに。
「あぁ、そうだ。お前の優しさにつけこんでるんだよ」
いつか、
「いつか、こうしても震えないようにするから」
だから、
「頼む」
と。
「ふっ、……うぅあ…」
二ノ宮君とわかっていても、まだその体の震えは止まらないけれど。
堪えていた涙が、次々に二ノ宮君の肩に落ち、濡らしてゆく。
それは止まることを知らなくて。
しばらく泣き続けている時、ふと
あぁ、大原君はこんな二ノ宮君が好きなのだと、なぜか思った。
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