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side 須藤充
帰り道に「あいつ揶揄うの好きだよなぁ」と呟きながら病院へ帰る。
今日の夜は、家族の仲直りの日。
福田の事だから、きっとうまくやると思う。
ひねくれていたと本人は言うけど、悲しみの逃がし方を知らなかっただけで、根はすごく真っ直ぐだから。
それと同時に、今日の朝を思い出して、いつまで周りを誤魔化し続けれるかなぁ、と思う。
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学校に着いてカバンを置いていると「すーちゃん、」と弱々しく呼ぶけぃちゃんの声があって俺の体の事情を知っている人だし、無視する必要も無いから「何?」と普通に返すと、いつの間にか体を支えられていた。
あれ…
「倒れそうな、顔色してるよ…」
すごく心配そうな顔、仲良い人にこういう顔させたくないから、俺は口外していないのに。そんな顔しないで
「だい、じょぶだから。」
器官が苦しい、肺が苦しいのか?くそっ、息が上がる
お姫様抱っこで保健室に連れていかれる俺
流石にちょっともう少しなかったか…と思ったけれど
つっこむ元気もない。幸い早めにいつも来ているので
生徒とはすれ違わなかった。
というか、多分、けぃちゃん遠回りしてくれてる。
情けないなぁ。
保健の先生は職員室に行っているようで勝手にベッドへ下ろされる俺。
「ほんとに、大丈夫だから、薬飲めばいいから、」
そう言ってポケットから薬を出してゴクッと飲むと「あ!ちょ!水は!!」と怒られた。
昔から錠剤を水で飲まないんだが、それをすると看護師さんにも怒られるし、けぃちゃんも怒っちゃった。
急にガラッと扉を開けて出ていったかと思えば数分後にまたガラッと勢いよく扉を開けて「はぁ、はぁ、水、はぁ」
と息を切らしながらペットボトルを持ってきてくれた
どうやら外の自動販売機まで行ってきたらしい
わざわざ優しいなぁなんてぼんやりしながら水を飲む。
薬を飲んだからか、薬を飲んだことへの安心からか、少し気分が落ち着いてきて「もう平気」と一言告げる。
「よかった、すーちゃん教室戻る?」
「いや、屋上に行くよ。カバン置いたし」
「福田様?」
「様辞めないと怒られるぞ、まぁ、屋上にいれば多分福田が来ると思うから」
昨日の夜にちゃんと電話してると良いけど
なんてけぃちゃんの横で考える。
「ほんとに好きなんだねぇ」
柔らかい笑顔で俺を見つめるけぃちゃん
あ、偽物で付き合ってるって言ってないっけ
まぁすーちゃんだし言ってもいいでしょ
「違うよ、男避けに俺が付き合わされてるだけ」
「嘘ってこと?」
「まぁそんな感じ」
「え、でも…」
「ん?」
「すーちゃん、福田、さんといる時楽しそうだよ…?」
それを言われて頭がツキンッとする。そんな事ない。
「そんな訳ないだろ、だって俺は好きになったって…」
続きが、言えない。
「ごめん、ごめん。大丈夫、いい。何も言わないで。分かってるから、でももし本当に好きになっちゃった時は後悔しないように、すーちゃんなりに向き合ってね…」
控えめに頭を撫でられながらそう言うけぃちゃん。
俺はその話を切り上げて教室へ行くけぃちゃんと、屋上へ行く俺でばらばらに別れて、何も考えないようにして屋上でぼーっとしていた。
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「ていうか、扉蹴るってどうなんだ」
改めて朝を思い出して福田の行動に疑問を抱く
あの人は手の使い方を知らないんだろうか。
そういう所は面白いけど、なんであんなに優しいのにああもガサツなんだろうなぁ、なんて思ってふふっと笑いそうになる自分に気づき、思い返す
"ダメだ"って頭が警告してる。
これ以上近づいたら、やばいんじゃないか。
この体は期限付きのお払い箱なわけで、そんな体で本気の恋愛なんて、置いていくことしか出来ないのに、してはいけないと肝に銘じていたのに、どんどん福田に惹かれていく俺がいる。
自覚はあるんだ。
俺からしたらあいつは眩しすぎる。
俺は、絶対に、福田を好きになんかならない。
改めてそう決意して、明日は福田から家族の報告をされるだろうな、と思いながらその日は眠りについた。
"誰か"のことを考えながら眠ってるおかげで、"死に怯えない夜"が増えていることに俺はまだ気づいていない。
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