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素晴らしき日常11
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(葵語り)
しばらくキスは続いていた。
キスもパフォーマンスの一部かと思うくらい、雅さんは魅せ方を心得ていた。人がキスをしているところを間近で見るのは初めてで、他を寄せ付けない位夢中で貪られると、恥ずかしくなるものだと知った。
今度から自分も気を付けよう。
「最初から気付いていたんだけど、本番だからどうにもできなくって。視界に入るたびにマリちゃんを思い出してた。ふふふ、相変わらず可愛い。うん。背も少し伸びたね。ふわふわの髪も同じだ。懐かしいな。」
雅さんが愛おしそうに島田の髪を撫でている。嬉しそうにニヤけている島田の顔を写真に撮って彗さんへ送りつけたいと思った。なんだか無性に腹が立つ。
2人が会話を始めたことで、しいんとしていた会場に喧騒が戻ってきた。
「雅さんは益々エロくなったね。雑誌で見て、居ても立っても居られなくて会いにきちゃった。さっきの緊縛ショー、僕、めちゃくちゃ感動したよ。涙が止まらなかった。」
「本当?ありがとう。本職を褒めてもらうのが1番嬉しい。で、この子がマリちゃんの恋人かな。初めまして。雅です。」
雅さんがきちんと俺に向き合い、左手を差し出してくれたので握手をする。見た目とは裏腹に礼儀正しい印象を受けた。こういうギャップは好きな人には堪らないと思う。特に歳上へは無差別にモテるのではないだろうか。
今まで熱いステージを演じてきた筈なのに、柔らかな掌は冷んやりとしていた。
「初めまして。葵と言います。島田の友達です。恋人ではありませんが。」
「雅さんっ、僕の『親友』なの。今日も心配だからってついて来てくれたんだ。」
「そう。マリちゃん友達ができて良かったじゃん。あのまま荒んだ生活してたらって心配してたんだ。じゃあ片思いの彼は?どうなったの?」
以前の2人は一夜限りだと聞いていたが、まるで久しぶりに会った旧友みたいに会話に花が咲いていた。
片思いの彼とは彗さんのことだろう。島田は7年間彗さんに片思いをしていたのだ。こいつは普段の行動に大きく反して、実は一途だったりする。チャラチャラしているが、心の芯は彗さんで染まっていたり、色々と難しい。
「うん。今は恋人だよ。一緒に暮らしてる。雅さんは、幸せ?」
「俺は微妙かな。報われないけど、不幸でもない。そんな感じ。マリちゃんがフリーだったら相手してもらおうかと思ったのに……残念。そこの葵君も一緒に3人とか楽しそうでしょ。なんならもう1人呼んで4Pとか。」
「えええぇっ、本当?僕は今からでもいいよぉ。」
「ちょっと、マリちゃん落ち着いて。冗談だって。」
島田が地団駄を踏んだ後、雅さんに飛びついた。予想もしてなかった突飛な行動に雅さんがフラつく。
4P……って4P?4人でどうやってやるのだろうか……先生なら知ってるかな。
4人……4人……思考が他所へ飛んでいく。
「嫌だ。もう雅さんとずっと一緒にいる。」
なかなか離れない島田に雅さんも困惑顔になった。すると、俺の後ろから轟さんが出てきて、島田を思いっきり引き剥がしたのだ。
「姫から離れてもらいたい。汚らわしい。どいてくれないか。」
「うわっ……」
たぶん、相当我慢したんだと思う。なんとなくだけど、轟さんからただ成らぬオーラが発せられていたのは感じていた。
島田が後ろに吹っ飛んで尻餅をつき、椅子がバラバラと辺りに散らばる。
「いったぁい……」
「マリちゃん、大丈夫?ちょっと轟さん、言えば通じるでしょうが。暴力は反対。マリちゃんに謝って。ほら、怪我はない?起きてごらん。平気かな。」
雅さんに怒られて、大げさに痛がる島田に轟さんが平謝りしていた。
大の大人が雅さんに叱られてしゅんとなる姿は、見ていて心苦しかったが、少し面白かった。
同時に構って貰えて嬉しいも伝わってくる。下僕ってこういうことなんだろうなと思った。
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