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暗転からの脱出7
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(熊谷先生語り)
暫く泣いている葵を抱きかかえていた。ふつふつと込み上げる怒りに、抱いている手に力が入ってしまう。
今回は本当に野田に助けられた。この旅館も野田の会社の贔屓だったから融通が利いた。客室に無許可で乗り込んだら普通は警察沙汰になるだろう。
俺たちが入った時には、覆い被さられた葵に松山が腰を動かしていた。
見たのが先か、身体が先か判らないが、気づいたら勝手に拳が動いていた。
カーッと頭に血が上り、思いっきり奴を殴った。何度殴ったかは覚えていなくて、野田に制された時には、失神した奴が横たわり、抜けた歯が血と共に床へ転がっていた。
正直まだ殴り足りないと思う。こんなに他人に対し殺意が芽生えたのは、生まれて初めてだった。
中居さんが部屋まで食事を運んでくれるのを葵と座って眺めていた。
急に宿泊を頼んだにも関わらず、行き届いたお持て成しをしてくれるこの宿に感謝をする。掘りごたつで並んでいただきますをした。
葵の目が赤く腫れているのが痛々しく、まだしゃくりを上げている。
その時、松山が目覚めたと野田からメッセージが入った。
「少しの間、松山と話をしてくるから、1人で待てるか?」
もぐもぐと小動物みたいに刺身を咀嚼していた葵の動作が止まった。眉間にシワが寄っている。
「行っちゃうの?すぐ帰ってくる?」
「ああ。話が済んだらすぐ帰る。今後一切葵に近づかないように念書を書いてもらうだけだから。」
「………うん、わかった。ご飯食べてる。もしかしたら寝ちゃうかも。」
妙に聞き分けがいいのは過度のストレスが原因だと思われた。心配だが、とりあえず解決しないといけない問題がある。
中から鍵を掛けるように伝えてから、早足で野田の待つ部屋へと向かった。
部屋に入ると、奴と野田が言い争う声が聞こえて来た。松山はパンツ一枚で後ろ手に縛られて身動きができない状態にされ、風呂場の脱衣所の壁を背に座っている。殴った頰が赤く膨れていた。もっと殴ったってバチは当たらないだろう。顔を見ただけで腹わたが煮えくり返る思いがした。
「熊谷……さん、こんなことしておいて暴行罪で訴えますよ。腕を早く外してほしい。今時の教師は節操が無いんですか。」
は?暴行?このゴリラは何を言っているんだ。葵が一体どんな思いをしてこいつの欲望の捌け口になるのを我慢したと思っているのか。
「訴えてもらっても構いません。そうしたらあなたが葵にやったことを洗いざらい話します。」
「葵君とは同意の上だ。彼から誘ってきた。」
平然とした顔で同意とかよく言えるものだ。
ふざけた横っ面を蹴りたい衝動に駆られ、足が少し浮いた。
「おかしいですね。葵は無理矢理だったと言ってますよ。俺達も現場を見てるので証言できますし。な、野田?」
「ええ、もちろん。裏付けもありますから。」
なんと、野田は押し入った時のムービーまで撮っていた。嫌がる葵が遠巻きから小さく写っている。その姿が可哀想で、胸が張り裂ける思いがした。
松山の顔色がサッと青く変わり、あともうひと押しだと確信する。続けて野田が失神した奴の写真を出した。股間が間抜けに勃った不快な絵面だった。
「だったら職場にこれをばら撒きます。デパートのあちこちに拡大して貼ろうかな。退職どころか、暫く外を歩けなくなりますよ。」
長い間床を睨んでいた松山が顔を上げた。
どうやら観念したようだった。
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