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放っておけなかっただけです
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「………」
思ったけど、こいつあんま喋らないよな…。
急ぎたいのに、立ち塞がられては用があるのかと前に進めない。
袋を見ると、さっきのはちみつしか入ってない様で、そのためだけに買いに来てくれたのかと少しだけ嬉しくなった。
「あのさ、どうかした?」
俺は薫が待ってるから早く帰りたいんだが。
「用がないなら帰るけど」
立ち塞ぐその横を通り過ぎようとすると、
「………これ」
と、ずいと目の前に袋に入れてあるはちみつを差し出された。
え、なにこれ
「くれんの?」
いらないけどさ。
だって家にあるし。
「違う」
違うんかい。
じゃあなんなのだとそいつを見る。
ソイツは一瞬視線をずらした後また俺を見て、整った口を開いた。
「どう使えばいい」
「はい?」
確かに薦めたのは俺だが、使い方を全く知らないとはどういうことだ。
「料理とかに、」
「しない」
話は最後まで聞けよこの野郎。
とにかく急ぎたかったが、ここでなにも言わないと全部舐めて終わらせそうだ。
「舐めればいいのか」
ほら言わんこっちゃない。
使い方知らないなら教えてやればいいが、いかんせん料理をしないのだからどうしようもない。
かといって舐めるだけというのもあんまりだ。
「朝ごはんは、パン派?ご飯派?」
「……なんで」
「いいから」
意味がわからないという様な顔をするイケメン。
それでもイケメンなんだから腹立つわ。
「どちらかというとパン派だが、別にどっちでもいい」
よし、
「なら朝からそのパンに塗ればいい」
そう言うと、あぁなるほどといった様に目を一瞬大きくした。
そして1度小さく頷いた後、
「買ってくる」
とまたスーパーの中に戻っていった。
取り残された俺。
あれ、これ帰っていいのか?いいのか?
『買ってくる』って、買ってまた戻ってくるって意味か?
てか、パン派って言ったくせにパン買うって家にないのかよ。
チロリンと着信を告げる音がポケットから聞こえ、名前を確認して通話ボタンを押した。
『あさにぃー、まだー?俺もうお腹減ったー』
聞こえてくる薫の声に、しまったと頭を抱えた。
『なにー、もしかして彼女とか?』
「俺が彼女いないの知ってるだろ」
冗談を笑って受けながすと、
「ちょっと人助けだな」
『あさにぃらしいね』
クスクスと通話口で笑う声が聞こえる。
「あぁ、もう少しかかりそうなんだ。
冷蔵庫の横の棚あるだろ?そこにお菓子とか入ってるから、好きなの食べてていいから」
『んー、わかった』
「夕飯もあるから食べ過ぎるなよ」
『はいはい、わかったよお母さん』
「誰がお母さんだ」
2人でそう笑いあった後電話をきり、全くもうと軽くため息をつきながらさっきまでアイツが寄りかかっていた壁に俺も寄りかかった。
ーお人好しすぎだぞ、亜沙樹
いつか、誰かに言われた言葉が頭をよぎったが、それがいつ誰に出会ったか思い出せなかった。
頭を振ってすぐに忘れ去った。
今日のはただ単に放っておけなかっただけだ。
母性本能くすぐる?
「いやいや俺男だし」
ほどなくして、2つの袋を抱えたイケメンが店員さんに見送られながらスーパーから出てきた。
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