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亜沙樹と浅葱
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薫は、いつも通りだった。
まるであの日のことなんてなかったくらいに。
いつも通り俺に甘え、いつも通り俺を慕う。
その度に募っていくのは、あの時嘘をついたことへの罪悪感。
その罪悪感は今現在、最高潮に達している。
なぜならば、
「……えっと、そうすけ?」
いつかの服を返すため、アイツが居るだろう、颯佑が居るだろう「庭」へ来ているのだから。
案の定、颯佑はそこにいて、ちょうど日陰になっているところで寝っ転がっていた。
「……」
俺が名前を呼ぶと、何も言わずむくりと起き上がる。
「あの、服……ありがとうな」
「……」
1度服と俺を見比べたあと、なにも言わずに受け取った。
話は終わったとばかりにその後まだ寝っ転がる。
「そ、颯佑、」
けど俺は、まだ言いたいことがある。
お前に、言わなきゃならないんだ、謝らなきゃならないんだ。
「……名前」
ボソリ、と口を開いた颯佑が言ったことは全く関係のないこと。
「名前?颯佑?………、違ったか!?」
まさか、間違ったか。
あの日薫がそう呼んでたから俺もそう呼んだが、違っていたのなら申し訳ない。
「いや、あってる」
「あ、そか、よかった」
どうやら間違ってはなかったらしい。
「俺は知らなかったけどさ、薫が言ってたから…」
「呼ばないでくれ」
「うん?」
「下で呼ばれるのは、好きじゃない」
えっ、と、。
颯佑っていう名前が嫌なのか?
いやでも、薫は呼んでたじゃないか。
「……けど俺お前の苗字知らないし」
少しだけ尖ったような言い方になってしまったことに焦った。
「神凪」
「かんなぎ?」
「神様に、凪で、神凪」
神凪颯佑。
それがコイツの名前らしい。
じっと見ている神凪の視線が俺に刺さる。
あ、俺も言ったほうがいいのか。
「俺は咲田亜沙樹。
花が咲くの咲くに、田んぼの田。亜熱帯の亜にさんずいと少ないで沙、大樹の樹。
それで、あさぎ」
「難しい名前だな」
「そうか?俺は気に入ってる」
ちょっと誇らしげに言うと、不思議そうな目で見られた。
「……浅葱色は好きなんだが」
「あぁ、あの色いいよな」
家はバッチリ洋風だったが、顔と好みは和風らしい。
かくいう俺も、名前と同じ浅葱色は好きだったりする。
深い深い、深くて淡い色。
儚げな、色。
いつだったか、その色を見つけた時は。
1つ覚えているのは、自分にひどく自信がなかったときだった。
「俺の1番、好きな色だ」
そういった俺はどんな顔をしていたか。
鋭い目を開いてこれまでになく俺を見てくる神凪を見ると、それほど変な顔をしていたかと少し落ち込んだ。
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