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誰がために 6
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ボソボソと頭上で聞こえる声に、だんだんと意識が浮上してきた。
「……で、………弁当なわけ?」
「………かった」
「はぁ?…………?」
2人。
神凪以外にもう1人いるその声を俺は聞いたことがない。
けれど、なんだか知っているような気もする。
「お前が人をそばに置くなんて、珍しいじゃん」
「……別に」
だんだんと冴えくる頭。
「ふーん」
神凪じゃない奴の声がすぐ近くで聞こえてハッと目を開いた。
おっ、と目の前の優しそうな男はニコリと笑う。
「起きた?」
「………はい」
突っ伏している俺の目線と同じ高さにあるその男の距離が近い。
目を見れば寄り目になりそうなくらい。
目をこすりながら起き上がる。
「近い」
思っていたことは神凪が言ってくれて、そして男の襟首を掴んで引き離した。
「っと、乱暴するなよ颯佑」
笑いながらそう言った男に神凪は何も言わない。
その男もそれがわかっているようだった。
颯佑。
そう呼ばれた名前で親しい人物であるだろうことは容易に考えることができた。
「俺、佐倉冬樹。颯佑の友達です。君は?」
「あ、俺は咲田亜沙樹です。」
神凪の、友達。
二人の様子からするにお互い分かり合った友、ということだろうか。
「亜沙樹君ね、おっけ」
ニコニコというより、ふわふわと笑う人だと思った。顔つきの優しさが雰囲気にもにじみ出ているというか。
あ、まさか俺これお邪魔ってやつではないだろうか。
だってきっとこの人は俺がここにいるなんて思ってもなかったはずだから。
「颯佑に酷いことされなかった?」
そう尋ねられた時、ピクっと神凪の眉が揺れ視線だけこちらに向いた。
「いや、どちらかというと助けられたというか、」
「………へぇ、颯佑が、ねぇ」
「神凪は優しいよな」
「そんなこと言うのきっと亜沙樹君だけだよ」
「?」
クスクスと笑うと冬樹さんに、また静かに頬杖をついて窓の外に視線を向ける神凪。
俺の料理をいつも美味しいと言って、弁当も残さず食べてくれる神凪は優しいだろう。
「まって、亜沙樹君、咲田って言った?」
ふと、聞かれたのはそんなこと。
「え、はい。咲田亜沙樹です」
咲田の姓は普遍的でもなければ、珍しくもないと思うけれど、なぜそんなことを聞くのだろうか。
「咲田薫君のお兄さん?」
「そう、ですけど」
「なんか………、想像と違ってた」
「想像?」
想像ということは俺の容姿は知らず存在は知っていたということだろうか。
さっきまで我関せずといった雰囲気だった神凪か、チラリとこちらを見た。
「だって、いろんな噂、あるからさ」
君の、と。
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