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部屋の前に到着して、僕はドアの前に立った。
薫先輩は僕と向き合うようにして、にっこりと笑った。
「補佐さんに負けないように、僕も頑張らないとなあと感じますよ。」
じゃないと消しゴムが飛んできそうです、と薫先輩。
「え!?消しゴムって…、」
「やだなあ、気付いてなかったとでも思ってたんですか?」
「お、思ってマシタ…。」
「ばっちり見てましたよ、雪さんのおでこに命中する瞬間。」
くすくすと笑う薫先輩はものすごく綺麗だけれど、その内容が内容だけにそんなことも言っていられない。
よくそんな前のことを覚えているな、なんて感心している場合でもなく。
「う、うそ、すごい恥ずかしいんですけど…!」
知らない間に、あんなアホな行動を見られていたのかと思うと顔が真っ赤になるのを感じた。
「ついでに言うと、雪さんが真剣に消しゴムを構えている横顔も見させていただきました。」
いじわるっぽく笑う薫先輩。
「…先輩こそ、いつからそんないじわるになっちゃったんですか。」
「最初からですー。」
「ま、真似しないでくださいよっ」
「ふふ、まぁそれは冗談として、仕事これからもがんばりましょうね。」
「はいっ」
「でも、」
薫先輩は一歩前に進み出て、
「っ、」
「無理はしないでくださいね?」
僕の耳に唇を寄せるようにして、優しく囁く。
ちゅ、という音がして薫先輩の顔が離れると、僕は耳元からカァッと熱が集まるのを感じた。
そんな僕を置いて、「では明日に。」と先輩はそこから去って行ったのだった。
……………え?
い、いまの、なに…!?
「き、きす…」
キスされた。耳に。
ちゅ、って。音。した。
呟いてみて、さらに体温が上がった気がする。
薫先輩て、こんなキャラだったっけ…?
この1年、わりと長い時間一緒にいたつもりだけれど、こんなこと初めてな気がする。
いや、確実に初めてだ。
たしかに頭を撫でてくれたり、優しい言葉をくれたり、先輩後輩によくある(と思われる)行動はよくみていたけれど、
さ、すがにこれは…。
それはもう、自然に唇を寄せてきた。
流れるような動きで、何気ないそぶりで、当たり前みたいに。
『無理、しないでくださいね?』
言っている言葉はいつもどおりなのに、
その声はまるで正反対。
耳元で囁くのはとびきり甘くて、少し掠れたような低い声。
ふわり、彼の匂いが強くなり。
先輩は僕より背が高いのだけれど全体的に中性的だから、"男"、っていう印象はあまりなくて。
どちらかと言えば、ゴツい感じの男子に人気がある彼。
だけどさっきのは、完璧に…、
初めて薫先輩の、男の顔を見てしまった。
どうしよう、
顔の熱が、
冷めない。
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