アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
悟も名残惜しくはある。けれど、自分の仕事はしなければならない。
仕切り直して、悟はベッドの端に座り、少し乱れた服を整える。一回ベッドへダイブしてしまったから、バトラー服にはホコリがところどころついていた。これは晴臣の朝食を運ぶ前にブラッシングだな、と頭の中でスケジュールを立てていると、晴臣の腕が悟の首に回って後ろから抱きつかれた。ぎゅうっと離さないようにする腕と、耳にあたる晴臣の息に、悟の心臓が跳ねる。
「今は悟がいい」
その上で囁かれて、ぶわっと体温が上がった気がした。
寝起きで甘えてる? ふとした瞬間に「晴臣様、可愛い」という言葉がポロッと出てしまいそうだった。今すぐ振り向いて抱き締めて、好きなようにどうぞって言いたい。とにかく晴臣が可愛くて、悟の思考は簡単に揺らいだ。
どうしようかと迷う悟が振り向きざまに肩を下げると、晴臣はよしよしと髪を撫でてくれた。というのも、悟の表情が困った仔犬のようで、ついつい手を出してしまったのである。
「お、怒られてしまいます」
「んー………………一緒に怒られよ?」
「もう」
「はい、これで共犯決定!」
こうして、悟は結局ベッドへ逆戻りとなったのだ。
二人で布団に潜り、暖をとる。ぎゅっと抱き合って寄り添って。悟は晴臣の胸に顔を埋めて、色んなことを感じていた。体温、匂い、心臓の音。先程まで晴臣が寝ていたこともあって、布団の中は元々温かくて、ふわふわと気持ちが良かった。
晴臣に触れると、愛おしさがますます込み上げる。それは晴臣も一緒のことだった。好きだよ、と伝え合って、晴臣の微笑みを見れば、悟の頬も緩んだ。
「あったかいね……悟、俺は近くにいるでしょ? ちゃんと感じて」
「はい……でも、晴臣様の温もりで眠くなってしまいそうです」
「いいよ。ずっと抱き締めていてあげる」
「そういうわけにはいきません。もっと怒られてしまいます」
しかし、胸いっぱいの幸せと心地良さを感じてしまい、次第に眠くなってくる。あともうちょっとで起きるから、と言い訳をして晴臣と喋っていると、いつの間にか瞼を閉じてしまっていた。
そこから聞こえる晴臣の言葉は魔法のようで、悟はすっかりと夢の中へ入っていった。
コンコン、と晴臣の部屋にノック音が響く。その後に足音がして悟と晴臣の目の前に現れたのは、また別の執事だった。晴臣の中では、もうそろそろ痺れを切らせてやってくるであろうと予測はついていたので、想定の範囲内である。
「あっ……! 申し訳ございません、晴臣様。お茶を持っていかせたまま戻ってこないと思ったら、どうしてこのようなことに……」
そして、二人を視界に入れた瞬間、驚きながら近づいてくる執事に晴臣はしーっと人差し指を立てる。
悟が夢の中へ旅立ってから数十分といったところだろうか。深い眠りについたことを確認した晴臣は悟を抱き起こして、静かにベッドへ腰掛けていた。晴臣がそばにいることで安心してしまっているのか、悟は特に起きることもなく、晴臣の胸の中ですよすよと眠っている。それが晴臣の安心材料だった。
「ごめんね、俺のわがままだよ。どうか悟を叱らないでやって……朝食、駄目にしちゃった?」
「いえ……いつでもご用意できますよ」
「そっか。じゃあ、もう少しこのままで……もう少しだけ悟の寝顔を眺めていたいから」
そう言って晴臣は悟の前髪をそっと撫でる。晴臣の瞳は愛おしそうに悟へ向けられていた。
End
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 101