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月の声 sideカメリア
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深く眠り込んだスアムを見て、やっぱりまだ子供だと思う。
少しくらい、ドキドキして眠れない、なんてことが起きてもいいだろうに。
つんつんと頬を突いて起きないことを確認して落胆する。
ベッドから降りて、タキアを呼んだ。
「あいつは?」
「まだおりますが」
「あいつも連れて行く」
「御意」
着替えて、スアムの額にキスをし、部屋を出る。
アデアを連れたタキアが来たが、アデアの方はすごく眠そうだ。梟だから夜行性だろうに。契約主が眠っているからか、引かれて眠いのだろう。
まあそれも、コイツの弱さに関係しているのだが。
「起きろ。でないと死ぬぞ」
「は???」
「行くぞ」
道中タキアがアデアに説明すると、アデアがとても難しい顔をした。
結界を攻撃しているのは北の魔物。何者にも従わない。目的もない。理性もないから暴れ放題。自由にやるヤツら。
好きにやるのも自由だ。生き方だって自由。けど、最低限の秩序は守ってもらわなくては困る。
一番外側に薄く張ってあるバリアはすごく薄く弱い。けれどこれでだいぶ数は減らせる。まあ、次のバリアはどんなにしたって壊れないだろうが。
北の領地はオレの領地。故に好き勝手にやらせない。
二枚目のバリアに触ったヤツらがじゅわっと溶けて消えた。
ここでも大半のヤツらは消えていく。それでも消えないヤツは報告対象だ。
何者なのか、どういう風に攻撃するのか見極めてから消す。それがオレの仕事のひとつ。
だが今日はオレじゃなくてアデアにやらせる。成長とどの程度魔法が使えるのかを見るのだ。
「タキア。問題ないか?」
「ええ。使い魔にしては戦闘向きですし。一応仕込んでおきましたから大事無いかと」
「ふぅん?」
面白くない、と思うのはアイツを意識しているからだとわかる。
何故スアムはアイツにだけ見せる表情があるのだろう。オレに対しては尊敬や敬愛、純愛なんかもあるが、どうにもアデアだけに見せる友情というか信頼というか、ふわふわと温かい表情をする時があって、それに心底嫉妬する。
ああ、思い出しただけでもアデアを捻り潰したくなる。
「なあ、タキア」
「はい」
「オレは頼りないのか?」
キョトンとしたタキアは小さく笑った。
「スアム様のことが本当にお好きなようで、私は嬉しゅうございます」
「いいから答えろ」
「貴方様ほど頼りがいのある方はいらっしゃらないでしょう」
「じゃあ、なんでアイツだけには……」
バリアの向こう側で戦っているアデアを恨めしげに睨みつける。
「私がお答えしても?」
「許す」
「アデアに向けるは親愛の方でしょう。カメリア様に向けるは敬愛と恋愛。貴方様が嫉妬するのは母君が貴方様にあげるはずのものを授けずに逝ってしまったからでしょう」
「………………概要は分かった」
「それは良うございました」
「でもムカつく」
「そのままでも良いかと」
「そうだな」
スアムの恋愛を手にしたのはオレで、アデアは親愛止まりということだ。心が近いのはオレの方だ。もっとも、比べる基準なんてないのだけれど。
大して時間もかけずに敵を殲滅したアデアが戻ってきたので帰ることにした。前よりも強くなっているし、魔法の使い方が上手い。センスが良いのだろう。
「なあ、なんでオレ様を連れてきたんだ?」
タキアに睨まれてヒッと小さくなったアデアを見て苦笑を浮かべた。
「スアムがオレの伴侶になるからだ」
「オレは認めてねーぞ」
またもやタキアに睨まれたアデアが小さくなった。
「認めるもなにもスアムが決めたことだ」
「お前が無理矢理嫁にしたんだろが!」
「………………。スアムは喜んでくれたが?」
「そ……れは……」
「お前ら使い魔は主人の幸せが己の幸せなんだろ」
「使い魔にも色々あんだよ」
「主人が好きすぎる、とか?」
「オレ様は別にそんなんじゃねえ……ただ……守りたいだけで……」
守る?どういう意味で?どんな風に?いや、それを聞いたところで、もうどうするのかは決まっているのだが。
「焼き鳥決定」
ボッと火の玉を出してアデアを追わせた。逃げ回るアデアをタキアが見て、やれやれと肩を落とした。
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