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新緑の香りと澄み渡る青空
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「クラス対抗リレーの奴が…さっき怪我しちゃって…っ他のやつは他競技があるし、代わりに出てくれそうな人がいないんだ…桜川くらいしか」
「…お、俺でいいの…?」
「頼む…っ、このままだと棄権扱いになってA組に点数がつかないんだ」
ふと、一縷が俺を見つめていることに気が付いた。
漆黒の瞳がゆらあるらと揺れながら、何かを訴えている感覚に苛まれる。
「分かったよお~集合場所はどこか教えてもらっていいかな~?」
「本当にありがとうっ!副会長のこの恩は絶対に忘れない…っ」
神様に出会ったかのように感謝されるものだから、「俺はそこまで感謝される存在じゃないよ」と口走りそうになった。
彼に先導されてリレーのスタート地点へと向かう為に足を踏む出したとき、刹那の聞こえるか聞こえないかくらいの声が耳を掠める。
「…ちゃんと、本気だせよ」
すれ違いざまに耳元で小さく囁かれた言葉に、ドキリ、とした。
「え?」と返答する暇もなく声の主、一縷はスタスタと歩いて行ってしまう。
真っすぐに伸ばされた背筋に聡明な顔つきが、他の誰よりも色濃く浮かび上がって見える。
「言われなくても、出すし…」
胸に手をそっと触れてみると、トクントクンと早く脈打っているのが分かった。
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