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見学①
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捻挫をしている淳と仮病を使った池田。二人はグラウンドの隅で体育の授業を眺めていた。
「池田がどうして頑なに体育祭を拒否するのかずっと訊こうと思ってたんだ。さっきので何となく分かっちゃったけど。……辛い思いをした事があるんだね」
池田はむっつりを決め込んでいる。
「うちは負けないかもしれないよ?そのためにも今色んな作戦会議や練習をしてるし……」
「そういう問題じゃねえ!」
「ッ、」
「あ……悪ぃ、急に……」
池田は気まずい沈黙に観念したように言葉を続けた。
「あのイキイキした目、『力を合わせよう』みてーな奇麗事……状況次第で全部一気にひっくり返るのを知ってんだ。あいつら自身はまだ知らなくても、オレは知ってる。だから…ああいう浮ついたやり取りを見てるだけでオレ、もう……」
「池田……」
自分を守るように丸められた背に、淳はそっと手を添えた。
「池田と何かあった子達とDクラスは、全く別人だよ?」
「分かってる……」
「――でも、怖い?」
「怖ぇとか……、」
ややおいて、観念するように池田の頭が小さく上下した。淳も噛み締めるように「そっか」と呟く。
「ありがと。池田の事が知れて良かった」
池田はジンワリと温かさを増す背中を後ろめたく感じた。
「……仲間を信じろと か言わねえの」
「え?そのフレーズ池田への死刑宣告でしょ」
「まあそう……だけど」
ドラマや漫画はいつもそう言うから。まるでこれが正解だとでも言うように。
「僕もさ、『信じる』ってイマイチよく分かんないんだよね。口にした時点で胡散臭くなるって言うかさ」
「……」
「その人なりの理由があって信じれずに居るのに、それを無視して『信じろ!』なんて乱暴すぎるよね。信じない人が悪者みたいになっちゃう空気もズルい。だから、そんな『脅迫』僕はしないよ」
「キャ……ねぇ、アレ……」
ヒソヒソとざわつく女子の視線を宰次が追う。池田が淳に力いっぱい抱きついていた。
「ちょいちょいちょい」
「何やってんだあいつら」
隣で佐藤や林が苦笑している。何の変哲もない日常会話に加わろう。そう思っているにも関わらず、宰次の表情筋はピクリとも動かなかった。自分自身でも戸惑う程に。
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