アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏の章一 青嵐(あおあらし)
-
藤沢に会わせないよう、側に置いて見張るには、勉強を教えるという口実は使える。
遊命にとってもプラスになる監視だ。
──なんて思っていたが、全てがばれてしまった今、ただ単純に、これは教えなまずいだろうと、可児は遊命の答案用紙を、ひらひらさせながら案じた。
「可児、丸一個しかないけど」
と、遊命。
「って、白紙じゃんか、これ。これも」
遊命は、手に取った可児の答案用紙を見比べて、呆気に取られていた。
「勇気あるなぁ、おまえ。ん…何だこれ? 何か書いてある」
「…?」
可児が手を伸ばし、二人で答案用紙を覗き込んだ。
「ほら、ここ」
遊命が現国の答案用紙を指差す。
隅に“彼氏をよろしく”と書かれてあった。
最初は、“彼氏に”と書かれてあり、“に”に×が付き、“を”が書き加えられていた。
「何のいたずら? 松本が書いたのかな?」
「…さぁ」
可児の脳裏に、ニヤニヤ笑っている担任、松本の顔が浮かんだ。
「…あのヤロー、いちいち癇に触ることしてくんねんな…」
「ん?」
「何でもない。遊命、ちょっと返して」
可児は答案用紙を取り戻すと、机の上に三枚並べ、継ぎ目をセロテープで貼り付けた。
長い一枚になった紙に、可児はマジックで文字を書き始めた。
「えー…、どういう意味? どうすんだよ、これ」
遊命が尋ねた。
「どうすると思う?」
「分かんねぇから、訊いてんだろうが」
「何やろなぁ、仁義なき戦いってやつ?」
「はぁ?」
「これからすること、内緒な」
「内緒って、答案用紙に可児の名前書いてあんじゃん。ばればれだって」
「それはえぇねん」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 115