アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
僕の家と学校は近くて、歩いても十五分くらいだ。バイクだからなおさら早く着いてしまった。
「…ありがとうございました」
「ああ。じゃあ、俺戻るから」
「気をつけてくださいね!」
「おう。ありがとな」
ああ、行ってしまう。もしかしたらこれで、彼らとの関わりが無くなってしまうかもしれない。
これが最後なんて。なんて、あっけない。
「あ。篠宮、スマホ貸して」
「……?」
誰かに電話するのかな?不思議に思いながらも、僕の白いケースを着けたスマホを渡す
「いつでも連絡しろ」
「…えっ」
急いでスマホの画面を確認すると、そこには桐谷くんの電話番号が登録されていた。
「い、いいの…?僕に連絡先なんて…」
「なんでダメなんだよ、変なヤツだな」
桐谷くんは、クク、と喉の奥で低く笑った。その笑顔に、不覚にもときめいてしまう。
嬉しいな。アドレス帳に登録されている連絡先は、数えるほどしかない。その中に桐谷くんのものが加わるなんて、もう何もいらないとさえ思えた。
「ありがとう」
「ああ。夜一回電話してくれ。それで俺のスマホにも篠宮の番号登録しとくから」
「わ、わ、わかった…!」
「じゃあ、またな」
「…!また!」
音楽室のみんなは、僕に"また"って言ってくれる。今日、何回言われたのかな。いつぶりに言われたのかな。
次会う日を明確な決めたわけでもないのに、そうやって言ってくれることがどれだけ嬉しいか、僕は知ってる。
今度遊びに行くときは、またお菓子でも買って行こうかな。とびきり甘いやつ。また根っからのパシられ気質って言われるかな。僕もそう思う。
でも、今度はみんなで一緒におやつ、食べたいな。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 102