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優馬の抵抗3
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菊池は優馬の席の前の椅子を引き、そこに腰を下ろした。
優馬は気にしないフリをして勉強を続けた。
静かな沈黙が流れる。
西日が赤くなっていくのがカーテン越しにもわかった。教室の窓から虫の声が聞こえてくる。
教科書をめくり、次の問題に目を通す。
正直、優馬は問題の内容なんて頭に入ってこなかった。
解き慣れた問題だから手が動いて勝手に解ける状態なだけだ。
頭の中は、心の中は、目の前の菊池のことばかりぐるぐるとまわっていて落ち着かない。
「…神崎」
呼びかけられて、ピクリと指先が反応するが、優馬は返事をしなかった。
「君は本当に強情だな」
「………」
「よく6年間も頑張っているものだ」
「…いえ」
優馬は短く最低限の返事をした。
菊池の言葉が嫌味なのか褒め言葉なのか、菊池の顔を見れない優馬には判断がつかない。
「もう動画も写真も消したよ」
「!……そうですか」
それは菊池が優馬に提示した軟禁の交換条件をはらったということ。
菊池が優馬を脅す材料をなくしたということを意味する。
それを優馬に伝えてどうするつもりなのだろう。
「…明日、君の自習室で待っている」
「え、…」
顔を上げると、ポンと菊池の大きな手のひらで頭を撫でられた。
温かい手。
その長く綺麗な指で優馬の前髪を搔き上げると、額に軽くキスをした。
今までのどんなキスより、優しくて控えめなキス。
優馬は自分の耳が赤くなっていくのがわかった。
「……っ/////」
優馬が赤くなって顔を伏せていると、菊池は静かに教室をでていってしまった。
「…ずるい、だろ、こんなの…っ…」
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