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想像以上
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次の日から、本格的な練習をはじめた。
「勇利。とりあえず、君のフリーは出来上がってるから、
先に全部教えることにする。」
「え、いいの?」
「あぁ、俺のプログラムはだいたい出来上がってるけど、
ヤコフと相談してもう少し考えるから。」
久しぶりに見たヴィクトルの真剣な表情。
ここでのヴィクトルは、
日本でのヴィクトルよりも更に厳しかった。
きっとこれが本来のヴィクトルなんだろう。
元いた場所に戻ってきて、
既に本調子を取り戻し始めてるヴィクトルがいる。
その日から毎日練習は続いた。
レベルの高い中での練習は、
想像以上にキツかった。
でもきっと、これが本来の世界レベルだと思う。
僕が甘かっただけだ。
ここでの練習にも、慣れてきた1週間後くらいから、
ヴィクトルは自分のプログラムの練習もはじめた。
ヴィクトルが見てくれる時間は減ったけれど、
ヴィクトルがいるうちに全部教えてもらったから、
フリーは自分で上まで持っていくしかない。
練習前は楽しそうに話すリンクメイトも、
リンクに1歩入れば、真剣な表情を見せる。
それだけみんな、この競技に本気になってる。
前回の僕のフリーで表現したのは僕自身の人生。
だけど今回は、ヴィクトルに対する"愛"。
美しいとも思えるその想いの中にある
どす黒い何か。
それに困惑する僕。
だけど、この想いはどうしても伝えたいんだ。
この僕のフリーで。
ヴィクトルはそれをわかってくれたのかもしれない。
ヴィクトルが考えてくれたこの振り付けはまさに、
僕の心の中を写したものだった。
だからこそ、気持ちが入る。
動きひとつひとつをもっと丁寧にしないと…
まだ、次のことを考えてしまう。
無意識に身体が動くまで、
そのプログラムを叩き込む。
1週間でヴィクトルに言われた大量なことを
全部思い出す。
まずは、それらを全部実行に移すところからだ。
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