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夜、賢斗の部屋に入ると、賢斗は電話で誰かと話をしていた。俺が入ってきたことに気づいた賢斗は、ソファを指差して俺に座るように促す。俺がそれに従うのを見届けると、背を向けて電話に集中し始めた。
「だから、母さん、今はそんなのするつもりは......え?明日?いやそれこそ何も準備してな.......もう村上さんがしてるって?......はぁ、わかったよ。でも、会うだけだから.......じゃ」
「......何の電話?」
賢斗が乱暴に電話を切ったタイミングで尋ねる。賢斗がそんなふうにイラつくなんて珍しかった。
首を傾げる俺に、賢斗は言いにくそうに頭を掻きながら口を開く。
「あー......明日見合いすることになった。つっても、子ども同士だけの簡単なやつだけど」
「......お前、まだ高校生だろ」
「予約しときたいんだろ」
皇家の名前が欲しい者はたくさんいる。だから今のうちから約束を取り付けようということか。
賢斗は俺の横に腰を下ろして、俺の持つトレーに乗ったカップを取り上げた。
「修弥の淹れる茶、だんだん美味くなってきたよな」
一口含んだ賢斗は、目を細めながら俺に言う。
鳴上や瑞希に教わりながら毎日練習していた成果を、賢斗に認められたと思うと嬉しくて、俺はつい顔を緩めてしまった。
「何だよその顔。すげー可愛い」
「う、うるさい!可愛くない!」
「いーや、可愛いね」
そう言った賢斗は、ソファの前にあるテーブルにカップを置いたかと思うと、左手で俺を引き寄せる。最近お馴染みの体勢だ。
「離せっ」
「駄目。今夜は覚悟しろって言ったろ?」
凌真はただの友達なんだから、そこまで根に持つことじゃない。それよりも......
「......お前だって、明日見合いすんじゃん」
見合いとなれば下手したら結婚までいく。俺が不満げに言えば、賢斗は少しだけ目を見開いた。
「なに?妬いてんのか?」
「なっ!?」
「.......お前がどうしても嫌だって言うなら見合いなんかやめるけど?」
賢斗は真剣な顔つきで、試すように俺に聞いてくる。
見合いしたら相手に甘いこと言ったりするのか?髪の毛を撫でて笑いあったりするのか?
そんなことを考えただけで、俺の胸がきゅっと痛んだ。
「......ぃ」
そんなの嫌だ。他のやつと仲良くするのは嫌だ。そう言おうと思って口を開いた矢先、賢斗が自嘲的に笑った。
「なんてな。お前がそんなこと言うわけないか」
言うわけない。
その言葉に頭が打ち付けられた気がした。
そうだ。俺は賢斗が嫌いで、賢斗の想いを受け入れる気はない。それなのに、今何を言おうとした?あんなこと言ったら、まるで好きだと認めてるみたいじゃないか。
......毒されてる。
最近流されすぎて思考がおかしくなってる。戻らなきゃ。賢斗が嫌いな自分に戻るんだ。......今ならまだ間に合う。
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