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「寝るか」
「‥ん。」
寝る支度を終えた俺を見て、ソファに座っていた稔さんが立ち上がり待っていたように声を掛けてくれた。
確かに眠い‥疲れたし、瞼が上がりにくい。
ガチャリと。
稔さんがドアを開けた先には俺の部屋のベッドよりも大きめのベッドが見えた。ボロアパートにあるベッドなんかより何倍も綺麗に見える
「‥入んないの?」
ドアノブに手をかけ開けてくれたままの稔さんの声が横から聞こえた。
部屋の前で立ったままの俺は稔さんに視線を向けた。
「ね‥稔さん」
「ん?」
「‥ベッド、座って?」
「良いけど、どうした?」
「‥座って」
「‥」
何も言わずに寝室へ入った稔さんに続くように自分も寝室へ入る。
カチャリとドアが閉まる音に背中を押されたような気がした。
「‥永久?」
「‥」
「?」
ベッドに座った稔さんの後ろに腰を下ろし背中に額を当てる。
「話しがあるんだ‥だから聞いて」
「話しならいくらでも聞くけど、これじゃ永久の顔が見れない」
「このまま‥聞いて?‥このままで、聞いてほしい」
だんだんと掠れていく声は弱々しく消えていきそうな程‥小さな声だった。
不安が俺をぐちゃぐちゃにしていく。
それでも‥俺は伝えたい
アナタが伝えてくれたように、大切なアナタに俺も伝える事を選びたい。
「‥分かった。このまま聞くよ」
「‥ん」
稔さんを後ろから抱き締めるようにお腹に両手を回せば布の擦れる音が静かな部屋に響く。
体をくっつけ寄り掛かるように体重を少しだけ預けた。
「稔さん‥色々、ありがとう。去年の‥葬式もそれからの事も、爺ちゃんと婆ちゃんの事も‥それから今日も‥今まで本当に沢山、ありがとう」
「‥」
「凄く感謝‥してます。文句ばかり言ったけど、本当は凄く‥‥凄くっ」
「‥永久、今日はもう泣くなって言ったろ?」
「‥ん、ごめっ」
全く困った奴だ‥とでも言いたげに深く息を吐いて俺の手に自分の手を添えてくれた。
「ごめ‥ごめ、なさっ‥稔さ‥ごめんっ‥っ」
「そんなに謝らなくても」
「違っ‥俺っ‥」
「‥ゆっくりでいい。ちゃんと聞いてるから」
乱れた心を押し込めるように、稔さんの背中に顔を押し付け強く抱き締めて深呼吸をする。
いつもの稔さんの匂いが鼻から全身に染み渡るような感覚に息を吐いた。
流れた涙は稔さんの背中に吸い込まれるように染みを作り濡らしていた。
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